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□さぼてん
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窓の外には、昨日から降り続いている雨。窓際では、質素過ぎると彼の上司が置いて行った覇王樹が雨粒を浴びていた。
これ幸いと外へ出て来る生き物の大合唱と雨音の無機質なハーモニーが、どことなく不安にさせるような そんな1日だった。


「はあ?」
何を馬鹿げた事を と言外にいいたげな表情で、スクアーロはディーノを睨み付けた(スクアーロがディーノを睨み付ける事は日常茶飯事だったので、その顔でスクアーロが何を言わんとしているのかがディーノには手に取るように分かるようになってしまっていた)。
「だーかーらー、もう一度言うぞ?」
「あ゛あ゛あ゛鬱陶しい!もういいぞドカス!俺はお前の提案に乗る気も無ぇし義理も無ぇぞぉ。さっさと諦めるんだなぁ」
そう言ってスクアーロが嘲笑うと、ディーノはムスッとした顔になった。
「でも…だって、みんな一緒がやっぱり楽しいだろう?」
自分の提案が却下された事に余程驚いたらしく、ディーノは少し食い下がった。「う゛お゛ぉい…2度も言わせるなぁ…おろされてぇのかぁ?」
冷めた眼でスクアーロが一蹴すると、ディーノはしゅんと肩を落とした。
「俺は…嫌だよ。ボスになんて、なりたくない…ずっと2人と自由に会えないくらいなら、ボスになんてなりたくねぇよ……!」
「甘えた事言ってんじゃねぇぞぉ…お前は今、お前ひとりじゃねぇんだ。お前の部下が今のお前を見て何て言うか分かって言ってんのかぁ?」
「そ それくらい…」
「お前は何も分かってねぇぞぉ。それはお前のただのエゴに過ぎねぇ」
何も話す事は無い とでも言いたそうにスクアーロは部屋の扉に向かった。
「スクアーロ!俺は…っ!」
「俺は、あいつを絶対に裏切らない。お前の部下だって、お前を裏切る奴ぁいねぇだろう。ボスのお前が、部下を裏切ってどうすんだって言ってんだぞぉ…俺は」
そう言ってドアノブに手をかけると、スクアーロは部屋を出て行ってしまった。
ひとり残されたディーノは、なにもない部屋でひとりごちた。
「………あーあ、ふられちまった」
いつでもあいつのいちばんは、あいつなんだ。
ぼんやりと窓際の覇王樹を眺めていた。
今更乍ら、窓を開け放したままだった事を思い出して急いで閉めた。
雨の匂いと湿気の充満した部屋で、この覇王樹の送り主に 戦う前から勝負のついた嫉妬心を抱いていた。
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