文集1

□あしたてんきに………side N
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もう、一生分の涙を流したんだと、自分では思っていた。
人間とは、頑張ればこんなにも涙を流せるモノなのだと、客観的に分析している自分がいた。

自分の世界の全てだった。今まで見聞きしたどんなことも、その人を介してしかオレの中には入ってこなかったから。
これから一体自分はどうなるのだろうと、寂しい気持ちを覚えていた。
今日は雨が降っている。この涙の跡を隠すには都合が良かった。
家の裏にしゃがみながら、そのまま正面を見つめ続けていると、誰かが近付いて来たのが分かった。
「あのさぁ、アンタ………そのままだったら風邪ひくぜ?雨降ってんだからよ」
ふと顔を上げると、髪の毛を頭の上で束ねている、如何にも遊んだ帰りといった風な男の子が立っていた。
「………誰だか知らないが………そういうお前こそ、風邪をひく………」
そうやって彼に暗に「帰れ」と言っても、彼は立ち去る素振りも見せず、何故かオレに謝ってきた。
「ええっと………どうしたんだよ?まぁ、言えないなら良いけどよ………」
「………………」
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