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□グリレグリ詰め合わセット
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1...ねぇ、内緒話しようよ。

「お前は、これからどうするんだよ」
僕に負けたグリーンが、マサラへの帰り道でそう訊ねて来た。
グリーンは自分は空いてしまったトキワジムのジムリーダーになりたい、そのために今から勉強をするつもりだと言った。
その後はおじいさんの手伝いを続けたいとも。
僕はなんとも言えない気持ちになって、俯いて黙り込んでいるだけだった。
「チャンピオンも辞退しやがって。これがあのロケット団を壊滅させた男とは思えないね」
「グリーン、知ってたんだ」
「知ってるも何も、どこもかしこもお前の噂で持ちきりだぜ?『ちいさな少年が、巨大マフィア ロケット団を壊滅に追い込んだ』ってな。そんな強いヤツ、俺はレッドしか知らないからな」
楽しげににっこり笑って言うグリーンが眩しくて、照れくさくてやっぱり顔は上げられなかった。
「本当に、お前はどれだけ俺の上を行けば気が済むんだか」
「……それは、僕のセリフだ」
「どこがだよ?」
グリーンのその言葉にムッとして、僕はようやくグリーンの顔を見た。
とぼけたような顔をしたグリーンと目が合って、一息吐いてから口を開く。
「グリーンはもうこのあとの事とかそれからの事とか考えてて、それがどういうことかもちゃんと分かってる。僕なんかただ強くなる事しか…グリーンよりもうんと強くなる事しか考えてなくて、このあとなんてさっぱり見当も付かないし…グリーンの方が、よっぽど僕より上を行ってる…よ…」
普段こんなに喋る事なんて無いから、最後が尻すぼみになってしまう。こんな事すらもまともに言えない自分に、グリーンに勝てる要素はポケモンの強さだけだ。僕の力なんて、無い。
そう言って黙り込んだ僕に、グリーンは溜め息を吐き出すと僕の頬を力一杯平手打ちした。
「化石盗掘を阻止したのは誰だ?泥棒を退治したのは誰だ?シルフスコープを取り返したのは誰だ?ポケモンタワーでガラガラの仇を討ったのは誰だ?シルフのビルを助けたのは誰だ?…あのサカキを倒し、壊滅させたのは誰だ?……全部、お前だろう?自分に自信を持てよ。なんで俺があんな事を考えていたか分かるか?お前が居たから…お前が俺のライバルだから、だよ」
暫く、静かな時間が続いた。
それに堪えられなくなったらしいグリーンが謝り乍ら僕の頬を撫でて来たので、思わず吹き出してしまった。
「っな、なんだよ!真面目に話してんだから笑うなよ!」
「ゴメン、嬉しかったからさ。そう言うなら、グリーンだってああいうこと言わないでね」
「あれは…お前が、あまりに何も言わないから…つい……」
グリーンがぼそぼそと文句を言うのを見ながら、僕は笑って手を差し出した。
「グリーン、絶対ジムリーダーになってね。僕はもっと強くなるから、グリーンも強くなったらまた戦ってね」
「……ああ、約束な」
僕の手を握り返すグリーンの手は、何故だかとても温かかった。




end
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