4

□キュウコンとユエさんのおはなし
1ページ/1ページ

「キュウコーン、どこいったのー?」
オレは、昨日ロコンから進化したばかりのキュウコン。
「キュウコンー?」
そしてこの声の主はオレのトレーナー、ユエだ。
「クゥー」
ここだ、と鳴いてやると、ソファーの下に寝ているオレを見つけたユエは嬉しそうににこりと笑った。
未だ慣れない大きな身体をいつものクセで狭い場所へと納めた所為で、少し息苦しい。
「そこ好きだねえ」
「クゥ」
からかうような声音に少しムッとして鳴くと、ユエはおいで、と手を伸ばしてきた。
ユエの手に撫でられる心地良さには逆らえず、大人しくソファーから這い出し腕に収まる。
「よしよし、いいこいいこ」
ユエの腕の中は、なぜだかとても安心する。
オレがまだタマゴの中に居た頃から、ユエとはずっと一緒だ。
オレにはタマゴの頃の記憶は無いけれど、不思議ととてもあたたかかった気がする。
オレが覚えている一番古い記憶は、初めてオレをみたユエの表情がとても嬉しそうに輝いていた事だ。
きっとその事を思い出せるから、オレはこの腕には逆らえないのだ。
「キュウコン、あのね。…少しだけね、嫌な事があったんだ…」
ユエの腕の中で、大人しく撫でられ続ける。
こういう時は、オレにはどうすることもできないから。
「クゥー」
「大丈夫…ありがと、キュウコン」
そう言うと、ユエはオレを解放した。
それでもオレはユエの傍を離れずにじっと見上げ、九つの尾から鬼火を生み出した。
それを浮かべてユエの周囲で躍らせると、ユエは楽しそうに笑った。
「すごい!ありがとう、キュウコン!」
そんな笑顔を見ながら、やっぱり初めて会った時のように、笑ったユエが好きだと思った。
「クゥー」
オレにも言葉が話せれば、そう伝えられたのだろうか…
「今日はやけに優しいじゃない?」
「…クー」
やっぱり、素直には伝えられそうにはない。



end

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ