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□幸せと愛の正しいかたち 2
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「キョーンちゃんっ あさだよぉーっ」
妹にちゃん付けで呼ばれる事にもなんだか慣れてしまったあれから3日目の事。
今日もいつもと同じ日常が待っている。
あれからひとつ、とんでもなく違和感なく染み付いてしまっていたとんでもなく違和感な事実を発見してしまった。
無意識のうちに座り方がおしとやかだったのだ。これが世に言うか言うまいかは不明だがスカート効果というやつか。
いつものように、自転車に乗り駅へ向かう。そのスカート効果の所為か、自転車に乗るのを少しだけ躊躇うようになった。何故スカートというやつはこんなにも短いのだろう。特に北高の制服は。
学校の最寄り駅へ降り立ち、ある人物を探す。勿論ある人物とは言うまでもなく古泉だ。
漸く見つけたイケメンくんは、今日もまた女の子連中に囲まれていた。なんともまあ相変わらずおモテになる事で。
俺の感情が顔に思い切り出ていたらしく、俺に気付いた古泉が苦笑しながら俺に向かって手を挙げた。
「ええーっ、彼女持ちだったのぉ?!」
「しかもあんな可愛げ無い子?」
「あたしに乗り換えちゃいなよーっ」
「すみません、あなた達よりもずっと大切な方なんです。僕はもう行きますので、これで失礼します」
何だか癪に障ったので、俺は腕を組んでさっさと歩き出していた。古泉もただ待ってるだけならこいつらを追い払えば良いものを。
古泉が後から走って追い付いて来たが、どうしてもそちらを向く事が出来なかった。
「さっきの事、怒ってますか?」
「………別に。一樹くんは随分とモテるようで羨ましいですねえ、と思っただけだよ」
「やっぱり怒ってるじゃないですか。手も繋いで貰えないようですし」
古泉は軽く溜め息を吐くと、俺の肩に手を置いた。
「…、何だよ?」
「あなたが好きです」
「〜〜……な、なんだよいきなり、恥ずかしいやつだな」
俺がそう文句を言った直後、突然抱き締められてしまった。
ちょっと待て古泉、ここは公衆の面前だぞ。
それから古泉は少しだけ離れてから、あろうことかこんな朝っぱらからこんな場所でキスをしてきやがった。
「っ!!、おま、バカ古泉!何して…っ!?」
「…これでも、許して下さいませんか?」
とんでもないバカ野郎の所為で真っ赤になってしまった顔を隠すように顔を逸らして、足早に学校への道を歩く。
「古泉、早く来いよ!!」
ボーっと突っ立っている古泉に向かって手を伸ばしてやると、やつは嬉しそうに笑って俺の手を取った。
これでバレたら困るのは自分だとか言ってたやつはどこのどいつだ、全く。


放課後、またしても試練が待ち受けていた。
「今日はいっつも私服に可愛げが無いユキとキョンの為に服を買いに行くわよ!!みくるちゃんと古泉くんも着いてきて、一緒にふたりを可愛くしましょう!!」
「…、いや、私は良いから…」
「今から駅前に行くわよ!ほら、さっさと荷物をまとめなさい!」
…団長さんよ、やはり俺達の意見は無視かい。
因みに俺が一人称を私と言うのはハルヒの前でだけである。流石に事情を知っている3人の前では私なんて言えたもんじゃない。
こうしてハルヒは強行的に俺達を駅前まで引っ張って行ったのである。
「もしかしたら、涼宮さんはあなたとこういった女の子同士のお付き合いをしてみたかったのかもしれませんね」
「そんなものは既に2人も居る可愛らしい団員に任せたいものだがな」
「涼宮さんはあなたが良かったんですよ」
「…、そう言われたって、俺は男なんだ。無理に女にする程思われたって全く嬉かねーぞ」
「本当に、妬いてしまいますね」
古泉が寂しげにそう呟くと、俺の心臓は何故かちくりと痛んだ。


「っじゃあ〜ん!!どぉーよ、かんわいいでしょー?」
「わああ、すっごく似合ってますっ」
「これはこれは、やはり涼宮さんはとてもセンスが良いですね」
「ふふん、でしょぉー?やーっぱりあたしの見立ては間違いないわね」
ハルヒに散々連れ回された挙げ句に漸く落ち着いた頃には、長門はどこぞのご令嬢かの如くに可憐な美少女に、俺は自分で言うのは身の毛もよだつほどに気持ちが悪いが例えるならば魔法でも使えそうな雰囲気である。少女向けアニメの主人公のような格好で、やはり下はミニスカートである。まさか己がこんなミニスカートを穿いているところを見る日が来ようとは。
「ふたりとも本当に可愛いわ!!このままプリクラ撮りに行くわよ!!」
「え、ちょ…っ?!」
「ほら、はやくー!!」
こうして何故か撮影会に入ってしまった本日の団活は、ハルヒの気の済むまで続いたのであった。


「じゃあ、また明日ね」
意気揚々と帰って行くハルヒの後ろ姿に、残された俺の手には本日の戦利品(プリントシール)だけが寂しく乗っていた。
「これはまた、嵐のようでしたね」
同じくプリントシールを持て余していた古泉が苦笑すると、俺達は何となく歩き始めた。
「このシールは、宝物にしますね」
「せんでいい。こら、携帯に貼るんじゃない」
どこか楽しそうに俺と古泉のみが変な格好で写ったシールを貼ると、古泉はそれをしみじみと眺めた。
団長の意向で全員2人ずつの写真が1枚ずつあった。勿論全員で写ったものもあったが、全員だと画面が狭いと文句を言ったのだ。
「そう言うあなたは、その格好を随分とお気に入りのようですが」
俺は今、ハルヒの見立てた服をそのまま着ていた。それは着替えるのが面倒だったからというだけであって、決してこの服を気に入っただとかそういうことではない。ましてや今朝の女の子連中の「可愛げ無い」発言を気にしての事では断じてない。断じて。
「強情ですね」
笑うなイケメン。
「そんなあなたにひとつお願いがあるのですが」
何だよ、今朝みたいな事だったら拒否するぞ。
「今日、僕の家に泊まりませんか」
そんな顔で、そんな声で言うのは、反則だろう………?




end?
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