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□大迷惑大王
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世界一と言っても過言ではない程にすごく迷惑な人間が、この寒いのにわざわざ目の前にやって来た。
物凄く迷惑な顔で睨み付けてやると、それが嬉しいのかにこにこと笑っていた。
「何故、君がここへ…?」
「そんなに警戒しないでよ。今日は骸くんをいじめに来たわけじゃないんだから」
同族嫌悪というのか…こういったタイプの人間は苦手だった。
「……誰?」
「君は知らなくても良いですよ。名前を聞いてしまったら耳が腐ってしまいます」
隣に居た恭弥が不思議そうな表情で訊ねるのを、目の前の男にわざと聞こえるようにバッサリと切ってやった。
「酷いなあ骸くん、オレの事ウィルスか何かかと思ってない?」
「変わりないです」
「…骸の事を丸め込める人間を初めて見たよ」
「丸め込まれてないです!」
まるで2対1のような状況に、少し泣きそうになっていた。
「まあまあ、そんな骸くんも好きだよ」
「〜〜っ消えて頂けますか?!」
恭弥が驚いたようにキョトンとしていた。
ああもう面倒臭い。誤解されたらどうするんですか
「兎に角!僕らのデートを邪魔しないで頂けますか?」
「だから最初からいじめる気は無いって言ってるのに」
「顔も見たくないと言いました」
恭弥の肩を抱いて白い男の隣を抜けようとすると、男は僕の腕を掴んで止めた。
「…何です、まだ何か?」
「うん、ちょっとね」

ぎゅうっ

突然抱き締められて、とっさに反応が出来なかった。
そのまま腕に力を込めてくる白色に、素早く反応したのは恭弥だった。
「それ、僕のだから触らないで」
恭弥のトンファーを片手で受け止めた男は未だに笑顔ではあったけれども多少は驚いたようだった。
「ヒュー、彼女強いね」
男が離れた事で冷たい空気が蘇って、漸く状況が掴めた。
恭弥は未だ臨戦態勢で、男はだいぶ離れた場所にいた。
「怪我したくないから今日は帰るね。また来るよ、骸くん」
「もう来ないで下さい」

男が立ち去ると、恭弥は珍しく自分から抱き付いて来た。
冷たかった身体が少し温もりを取り戻して、その腕で恭弥を抱き締め返した。
「恭弥…ありがとうございます」
嬉しかったですよ
耳元で言ってやると、そこに少しだけ朱が差した。
「大好きですよ、恭弥」
顔を上げた恭弥は、小さな声で 知ってるよ と呟いた。




end
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