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□Per favore mi ami.
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拘束 束縛 監禁 緊縛
そういった類のモノにはなれきっていた筈だ。
…ただし それは物質的な事象に限った事だったけれど。
ひとりの人間に対してこんな感情を抱くなんて事は初めてだったので、ただただ戸惑うばかりだった。
自分の感情に名前が付いて、それを自覚して相手をみると、彼の周りにはいつも暖かいものが溢れていて僕は一歩も近付けなかった。
眩しいものをじいと眺めていると、僕はある事に気付いてしまった。…気付かなければ良かった。
自分の中の醜いものがぐらぐらと暴れ始めた。抑えつけるのに精一杯で、彼はその間にどんどん遠ざかって行ってしまった。
僕の事を見る事を忘れてしまった彼に、僕は少なからず寂しさを感じていた。
大丈夫のふりをする事は、僕に大きな心労を与えた。
辛いのだ 苦しいのだと分かっていても、彼に近付きたいという気持ちは変わらずにあって。
こんな不毛な気持ちを引き摺って、今日も重たい扉を開く。
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