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□Per favore mi ami.
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コンコン

控えめに鳴ったノックに、雲雀はどうぞと返事をした。
どうせ誰がやって来るかは分かっていたので、特に警戒もせずに軽く入室を促した。
「失礼しますね」
扉を開けて入って来たのが思った通りの人物であると確認して、雲雀は再び顔を伏せて仕事に戻った。
「少しは警戒した方が良いですよ?仮にも僕は君の敵なんですから」
「…別に、君を許容したわけじゃない」
にこりと笑って骸が言うと、雲雀はむっとして骸を睨んだ。
骸はそうですかと言い乍らソファに座ると、そうだ と声を出した。
「雲雀くん あまいものは食べられますか?」
「…大丈夫、だけど 何」
骸は箱を取り出すと、丁寧に蓋を開けた。
「このお店、普段はすごく並んでいて なかなか手に入らないんですよ」
箱の中から出て来たのは、生クリームの詰まったロールケーキだった。
見るからに胸焼けを起こしそうなそのケーキを、骸はどこからか包丁を持ち出して来て綺麗に取り分けて雲雀に寄越した。
「はい どうぞ」
僕は紅茶でも淹れて来ますね と言って行ってしまった骸の背に、雲雀はぽつりと本音を漏らした。
「僕なんかじゃなくて、好きなひとと食べれば良いのに…」
言ってから少しかなしくなって、振り払おうと急いであまいケーキを口に入れた。
その甘さが余計にかなしさを煽って、雲雀は思わず俯いてしまった。

骸が紅茶を手に戻ると、雲雀はびっくりしたように顔を上げた。
「どうか、しましたか?」
なんでもない と首を横に振る雲雀に、骸は少し寂しさを感じた。
強がりな性格だから、どうせ自分には本当の事なんて言ってはくれないのだろう。
…彼になら、言うのだろうか。
そこまで考えて、寂しくなって考えるのをやめてしまった。
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