3

□幸せ家族計画
2ページ/3ページ


ピンポーン

もう随分長いこと聞いていなかった間抜けなチャイムの音に、大袈裟なくらいに反応した。
びりびりという空気の音に、チャイムの余韻が聞こえた。
間違いなく、何者かの来訪を告げる音だった。
これには疲れた身体も自分から動き出して、来訪者を確かめに玄関へと足を向けた。
小さな窓から外を覗くと、無意識の内から待ち望んでいた人物に間違い無かった。
鍵を開けて扉を開くと、蒼い変な髪の人間が抱き付いて来た。
冷たかった部屋に、温度が戻った気がした。
「恭弥…会いたかったです」
僕もだと、言おうか言うまいか少し迷ってやっぱり止めた。
「おつかれさま、骸」
抱き締められたままそう言うと、嬉しそうに骸は笑った。
「美味しそうな匂いがします」
「ハンバーグ、作ったよ」
新婚に戻ったみたいだと笑う骸に、取り敢えず寒いから扉を閉めてくれと頼んだ。
せっかく戻った温度が台無しになってしまうと思ったから。
僕は今にも倒れそうだったけれど、1週間振りに笑顔を見たら、疲れもどこかに行ったみたいだった。…本当は、どこにも行ってはいなかったけど。
「恭弥、お疲れ様でした」
骸がそう言ってくれたから、あとお風呂の準備くらいなら出来そうだな と思った。




end
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ