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□ぷりーずてるみーはっぴねす
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僕は時々幸せについて考える。
勿論、僕がひとりだった時は欠片程も考えた事の無かった事だ。
今がそうなのだと思うと、途端に怖くなるのだけれど。
しあわせ、って、何だろう。
あなたなら、その答えを知っているような気がするから……


ぷりーずてるみーはっぴねす


「おい、恭弥?どうしたんだ?」
ぼうっと目線を宙空に向けたまま考え事をしていたら、目の前におおきな手のひらがひらひらと現れた。
途端に我に返ると、金髪の外人は心配そうな瞳で此方を見ていた。
「なんかあったか?」
「……、ねえ あなたはしあわせって何だか分かる?」
余りにも唐突であったらしい問いに、目の前の外国人はびっくりして固まってしまったらしかった。
「…恭弥でもそんな普通の女の子みたいな事考えたりするんだな」
そのまま待っていると、漸く動き出したその人は失礼な事を言ってのけた。
「……地獄は良い所だってギザっ葉頭が言っていたよ」
「調子乗ってた俺が悪かったから是非ともその物騒なモンをしまってくれ…」
なんだか真面目に訊く気も失せてしまって、僕はトンファーを仕舞うと再び机に向かった。
「…そーだなぁ…」
黄色い外人は唐突に会話を続けると、僕の好きなあの笑顔でもって僕の一番怖れている事を言った。
「今みたいに、恭弥と一緒にいる事…かな」
何故そんな事を平気で言えるのだろうか。もしかしてこの人は、いずれ今が壊れてしまう事が怖くは無いのだろうか?
僕は、怖い。初めて手に入れたものだから、それがなくなってしまった時 また元に戻れるかどうか…戻ってしまう事が、ひどく怖い。
「恭弥は、しあわせじゃないのか?」
しあわせだと、認めてしまえる程の勇気が…自信が、僕には無い。
だから、首を横に振った。
「それは、しあわせって事か?」
「…わからない。認めてしまえば、それが壊れた時に辛いよ」
キョトンとした顔の金髪に、やっぱり良く分からない事を言ってしまったかなと少し後悔した。
困らせたかった訳では無かったのに。
「じゃあ、こうすればいい!」
ひまわりのようなにこにことした顔で、名案だ!とでも言いたそうに此方を見た。
「…何?」
「俺がずーっと、恭弥の傍から離れなければ良いんだよ」
我ながらナイスアイディア、と自画自賛している男に、内心少しだけ動揺した事を隠して文句を言う。
「馬鹿じゃないの。そんな事無理に決まってるって、今時赤ん坊でも分かる事だよ」
「そんな事ねーよ、ぜってー恭弥をひとりになんてさせねーからさ。こう見えても、約束は守る男だぜ、俺は」
「……、あなた やっぱり一度地獄に行って来た方が良いよ…」
そんな有り得ない約束で嬉しいなんて思うなんて……僕も、随分と絆されている。

僕は漸く、今をしあわせなんだと素直に感じる事が出来た。




end
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