3

□Buon Compleanno!
1ページ/2ページ

「こんにちは、恭弥くん」
玄関の扉を1/3程開いて顔を覗かせた雲雀に、骸は嬉しそうに言った。
「何しにきたの、君」
嫌そうに顔をしかめて、雲雀は開けなきゃ良かったと後悔した。
「今日は恭弥くんのお誕生日だと聞きましたので、お祝いしようかと思いまして」
「…要らないよ、そういうの」
「お誕生日にはケーキを、というのが日本では定石らしいので、僕もそれに肖ってチョコレートケーキを購入して参りました。食べて下さいませんか?」
四角い可愛らしい箱を持ち上げて、骸はにっこりと微笑んだ。
複雑な気分になった雲雀は、兎に角入って、と扉を開けた。

可愛らしいラッピングの施された箱を、骸は丁寧に開いてケーキを取り出した。
「どれが良いのか、お店で1時間位悩んだんですよ」
可愛らしくデコレートされたケーキには、『きょうやくん お誕生日おめでとう』と可愛らしい文字が書かれていた。
「…僕、子供じゃないんだけど」
「今日は子供の日じゃないですか」
「関係無いよ、それ」
雲雀が切り分けもせずに付属のプラスチックのフォークでケーキの端を削って口へ運ぶと、先程から楽しそうににこにこと笑っていた骸の笑みが更に深まった。
「如何ですか?」
「うん、毒は入ってなさそうだね」
「もう、僕の事を何だと思っているんですか」
「僕の標的、だろう。そして、僕も君の標的だ」
「そうでしたね、そういえば」
骸も同じようにケーキを削って口へ運び乍ら、クスリと笑った。
「標的の僕を祝ってどうするつもりなの」
「君が歳をとって動きが鈍るのは、僕としましては万々歳ですよ。そして、ケーキで肥って頂ければ更に計画通りです」
「それ、随分と時間が掛かるよね。僕がお爺さんになるまでそうするつもりなの」
「ええ、僕は恭弥くんがお爺さんになるまでずっと傍に居て、ずっとお誕生日を祝って、ずっとケーキを買って来ます。そして、いずれ君を僕の手で殺して差し上げるのですよ」
「今じゃ敵わないって漸く気付いたの?」
「今は勿体無いって僕は気付いたんです」
ケーキの欠片を同時に口へ運ぶと、どちらからともなく顔を寄せて唇を重ねた。
「僕が君を肥やして殺してあげますから、絶対に他人に殺されたりしないで下さいね」
「お返しに君の誕生日にはチョコレートを山ほどあげるから、1日で食べきって鼻血を出して出血多量で死んでね」
「君は僕の誕生日を知らないのでは無いですか?」
「適当な日を勝手に君の誕生日に設定しておくよ」

(別に誕生日じゃ無くても良いのにね)
気付いてはいたけれど、2人とも気付かないふりをしていた。




end
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ