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□YOU LIGHT UP MY LIFE
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他人の感情の変化というものが、理解出来るようになった。


はじめはただ、他人の事なんてどうでも良かったから、そんな事を気にもしたこともなかった。
だからはじめのうちは、あなたの感情の変化についていく事が出来なかった。
ころころと、小さな子供のように感情を変化させるあなた。
泣いたり笑ったり愛したり憎んだりして、いつだって私ひとりだけが戸惑うばかりの日々だった。
元々の負けず嫌いな性分のおかげか、はたまたあなたが巧かったのか、段々と他人の…あなたの感情を追い掛けられるようになり、ついには人間特有の…恋愛感情を、自分の中に見つけてしまった。
その事にはじめはひどく怯え、自分がべつのものに変わってしまったのだとひどく悲しくなった。
あなたはそんな私を目敏く見留め、気遣うように、優しく私にそれを教えてくれた。
あなたの教えてくれた感情の行き先はあなたなのだと伝えた時には、流石に私にもわかりやすいくらいには動揺していたけれど。

そうして僕は知ってしまった
あなたに鍛えられたこの感受性が、様々な感情を僕に教えてくれたから
知らずとも良い事までもを、僕に伝えてくれたから
成る程、これでは他人の事情に構わずには居られない筈だ。
僕はあなたの世界を、ほんの少しだけ垣間見た気がした。



刹那にあの女性が捕らわれていると教えたのは僕だった。
はじめに彼女に気が付いたのはフェルトだったが、彼女が真っ先にそれを伝えた相手が僕だったのだ。
『作戦行動に、支障を来すかもしれません』
彼女はそう言って僕にその事実を伝えた。
もしも昔の僕のままならば、きっとそんな下らない事は言うなと…そもそもこんなリスクの高過ぎる任務を実行等しようとさえもしなかっただろう。
本当に、私の中で あなたの存在は大き過ぎたのだ。



「そのまま、帰って来なくても良い」
それは、半分本気だった。
あなたの教えてくれた感情が、僕に教えてくれた事。
それを、間違った事に使ったという覚えは無い。
確かに私たちの目的は、世界平和の為の戦争根絶だ。私は特に、あなたの為に、それを強く望むようになっていたから。
刹那はその計画には必要不可欠な存在で、ダブルオー無しでは戦争根絶等到底出来ない事は目に見えていた。
その上での、半分本気だ。
彼に、私のようには、なって欲しくは無かったから。
中途半端に離れて、中途半端に芽生えて、絶望的な後悔に苛まれるような事には、なって欲しくは無かったのだ。
冗談を言うなんて珍しい、とアレルヤは言った。僕は半分本気で言ったのだから、それは冗談等ではなかった。
彼がどちらを選ぶかなんて、愚問にも程があると言うのに。
私は彼を救いたかった。彼にここを離れて欲しかった。マリナの表情を見て、どこか確信めいたものを持っていたから、余計に。
私は救われたかったのだ
私の思う通りには何一つならない世界を、私は逃げ出したかったのだ。
そんな感情、あなたに出会うまでは欠片だって知らなかった 知ろうともせず愚かだと罵った。

それが例え、己の中に生まれたエゴだったのだとしても(きっとそんな事を言うと、あなたは喜ぶのでしょうね)


私に光をくれたあなた
色をくれたあなた
愛する、あなた

私を救ってくれるのは、
あなたしか居ない というのに。




end
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