Como una doble helice
□04.
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ハリエットから報告を聞いたなまえは、椅子に沈んで一瞬考え込んだ。
今から現場を見に行く時間はない。
なまえは気のぬけた顔をして外を眺めている若い男を見た。
「バーティミアス、襲撃事件の偵察に行ってきてくれる?くれぐれも他の人間や妖霊に気付かれないように。終わったらこの部屋に戻ってきなさい」
そう言ってなまえは会議の書類に目を通し始めたが、目の前の若い男は動かない。
なまえはぱたりと書類を机に戻し、ため息まじりにその一言を付け加えた。
「―――…今のは命令よ」
しぶしぶといった風にバーティミアスが消えたあと、なまえはハリエットを連れて会議へ向かった。
会議は相変わらず長く、単調だった。
数年前までは自身も担当地域の報告をしていたが、今では一貫して聞く側だ。
三十分もすると、暖かい部屋と心地いい椅子を従えた眠気が襲ってきた。
ハリエットにコーヒーでも頼んでおけばよかった。
なまえは落ちてくるまぶたを押し上げ、大使たちの報告に耳をかたむけた。
*
襲撃事件のあった場所は静かな住宅地だった。
というか、正確には邸宅地だ。
どの家もおおぎょうな門がでんとそびえ、道路が家の前までのびている。
お目当ての家を見つけるのは造作なかった。
一際でかい上にやじ馬がわんさか集まっている。
おれはリスになって近くの木へ駆け上がった。
警官の姿をしたフォリオットたちが仏頂面で群衆を制している横で、別の警官(人間だ)が門に取り付けられたベルを鳴らした。
ドアを開けたのはメイドではなく、この家の主人らしかった。
優に八十は越してるばあさんだ。
午後になると中庭で紅茶を飲みながら読書をするような、典型的な。
かたく握った手を震わせ、着てる服と同じぐらい青ざめた顔をしている。
警官はそっとばあさんの腕に触れて優しく言った。
「アリソン・フォスターさんですね?」
「ああ、やっと来ていただけたのですね。もう私どうしていいものやらとお待ちしていました」
「早速お聞きしますが、犯人は見かけましたか?」
「いえ、ちょうど近くの本屋へ出かけていたものですから」
集まったやじ馬が少し上を見れば、ドングリを抱えたリスが大いに頷いているのが見えたかもしれない。
ほら、おれが言ったとおりだろ?
第一印象だけで、ばあさんは完璧にやつの五十年かそこいら後の姿だ。
やつもとんでもない本の虫だからな。
やつの家の本棚ときたら…ま、その話はまた今度にしよう。
おれはふわふわの尻尾をぴくりとさせながら聞き耳を立てた。