《あの男…》
□あの男…6
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日曜日。
動きやすい服装。
そして、使い慣れたラケット。
髪の毛は邪魔にならないように結んだ。
ちょっとはおしゃれに気を使ったつもりだが、そもそもテニスをしに行くのだ。それに、柳生はそんな事よりもきっとテニスのし易い格好で来てくれた方が、喜ぶような気がした。
と、そこで柳生のことを考えている自分にぶち当たる。
「別に…柳生君とテニスをしに行くだけだし…」
自分自身に変な言い訳をし、花子は自宅を出た。
こうして、テニスをするのは久しぶりだ。
どこまで自分の体力が落ちているのか、知るのは少し怖いが、やはり楽しみだ。
と、花子はつと思う。
テニス部。
あれほど有名だ、有名だというわりに、花子はテニス部を観に行ったことがないせいか、部員にはそれほど会わない。
もっとも、生徒の数も多いので、すれ違ってもわからないだけかもしれないが、先の件でもわかるように、テニス部の3年は目立つ人間が多い。
にも、かかわらず。
花子が会ったテニス部員は、真田と柳生、そして仁王の3人だけだった。
実際、興味のない人間にしてみたら、その程度のもので、花子の周りがワイワイ言っているものだから、変に意識をしてしまっているのかもしれない。