《あの男…》
□あの男…8
1ページ/6ページ
朝、学校に行く事が、憂鬱でたまらなかった。
かつて、これほどまでに嫌だった事は無かったように思える。
そして、校門を過ぎ、下駄箱で花子は歩みを止めた。
「…………邪魔なんだけど」
花子の下駄箱に背を預け、腕を組んでいる長身がそこにはいた。
「話があるんじゃ」
「……………」
何を、話すと言うのか。
「放課後、教室まで行くき。逃げるんじゃなか」
仁王は花子の返事も待たずに、スタスタと去って行ってしまった。
全く、何であの男が出てくるのか。
花子は、ため息を漏らさずにはいられなかった。
教室に入るや否や。
「山田さん!」
と、隣りの席の彼女から、昨日の話を持ち出された。
彼女には悪い事をしてしまった。
一緒にテニスコートに行ったのに、試合が始まる前に、花子は一人で帰ってきてしまったのだ。
「昨日はごめんね」
「ううん、大丈夫だよ。それより…山田さんは大丈夫?」
そう言ってくれる友人が出来て、本当に良かった。