《あの男…》
□あの男…9
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学校はどうか、と問われ「楽しい」と答えた。
教師からの当たり障りのない質問には、肯定していれば良いだけだ。
「そう言えば、やはり部活には入らないかい?」
「はい。それほど興味のあるものもありませんから」
「そうか。山田さんは外部受験…だったか?」
「いえ、まだ決めていなくて…」
教師は頷いた。
「この間の模試の結果を見ても、他の進学校を受けてもいいかもしれないな」
花子は大学に行きたいと思っている。
だからちゃんと、今のうちにやりたい事を探し出し、その勉強ができる大学を受けたいのだ。高校へはそのために行くようなものだ。
まだ時間はある。
花子は、ぼんやりとそんな事を思った。
何をするにも、学生の本分は勉学である。
花子はあの日から、多目的室から、図書室へと、放課後の行き場所を変えた。
さすが私立の図書室だ。
図書室というよりも、図書館といっても問題なさそうだ。
個室の自習室に、映像が見られる個室もある。
面白そうな本をいくつか手にすると、花子は大きな机にいくつかあるうちの、空いている椅子に座った。
そしてページをめくる。
(人間には、IQというものの他に、EQというものもある。)
花子は序文を、読み始めた。
(EQとは、心の偏差値の事である…へぇ…)