Searcher本編

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解放からの、再スタート―――



ポケモンたちの持つ属性、タイプ…それは、シンオウ神話においてアルセウスが与えたとされている。
実際はまあ、まるで自伝を残したかのようにその通りであり、人間たちは長い時間をかけて世界を満たしている17種類のタイプを発見した。
しかし、時の流れと言うのは変化をもたらした、新タイプの発見と言う“変化”を。
人間とポケモンと言う二つの異種族が共存する事によって新たに誕生したと言える18番目、仮称『フェアリータイプ』。
そのタイプが出現した事によって、小難しい事は『解放の物語』を参照して頂きたいのだが…まさか、この物語の裏で別の事件が起きていたとは、異世界に飛び込んだトレーナーも気付いていなかった。

『アルセウス、“彼女”があの世界へ』
『……アグノム。すまん、私が動けないばかりに』
『いいえ…それより、『精霊プレート』は?』
『まだ、生まれる気配がない』

ポケモン世界のタイプは途方もないエネルギー、これらを制御しているのがアルセウスの持つ『プレート』であり、各々自我を有している。
自我の強いこれらを配下として制御する事ができるのが創造神・アルセウス、そして、新タイプを制御し暴走を食い止める新たなプレートが生まれようとしているのだ。
こちらも仮称『精霊プレート』、フェアリータイプを制御するアルセウスの17枚目のプレートが今、誕生しようとしているが…例えるならば、現在のアルセウスは臨月の妊婦である。
大きなお腹を抱えて思うように動けない、少しでも外部からの刺激があれば流産の危険あり、安全な産婦人科としてパルキアが創り出す特殊な『空間』に籠っているのだ。
だから、ポケモン世界の危機に最高神が動けない、流石に臨月の妊婦状態を動かす訳にもいかない。

『彼女と、他のトレーナーたちが上手くやってくれれば良いけど』
『信じましょう…私たちには、それしかできません。では、救出した残りの3人を元の場所へ…っ!?』
『あれは…!』

世界から零れ落ちてしまった7人のトレーナーとそのポケモンたちの内、3人は間に合わずに繋がってしまった異世界へ落ちてしまった。
助けた内の1人は、その異世界へ飛び込んでもらい流出したタイプエネルギーの解放を依頼したが、残りの3人には何の罪もなければ頼みもない。
だから元の場所、震度4の地震が発生したその瞬間に存在していたコガネシティへ還そうとしたそのタイミングで、ポケモン世界から桃色の軌道が飛び出て来たのだ。
美しい曲線を描いた桃色の曲線は、幼児の手に収まったクレヨンのような楽しげな光りの絵を描いて…心の三神の目の前を通り過ぎた。
その軌道の正体は、子供のような無邪気な笑みを浮かべた桃色のポケモン――全ての生命の、始まりの存在――





「みゅう♪」





151番目の幻…ミュウが、ポケモン世界から消えた―――





『っ!!??な、何でミュウが!?』
『…大方、いつもの気まぐれでしょう』
『いけない!ミュウがいなければ、世界の均衡が…!』

ミュウ――ポケモン図鑑の151番目に設定されていながら、その存在だけは確認されている本当の意味での“幻”…。
一度は発見された、そして「ミュウ」と言う名前を与えられ、再び消えた存在は全ての生命に共通するDNAを持っているために始まりのポケモンとも呼ばれた。

アルセウスは世界を創造して、全ての生命を創り出した。
ミュウは全ての生命の始まりとされている…って、どっちが正しい?

世界中の研究者たちが大論争をしているこの問題を討論するには、小難しいでは終わらない議論になるため省略する、早い話が「ニワトリが先か卵が先か」の議論だ。
ネタバレをしてしまうと、“ミュウ”と言う存在はアルセウスが創り出した宇宙空間にポン!と自然発生した、特異点とも呼べる存在なのである。
アルセウスとミュウ、二つの“ハジマリ”は世界の均衡を支える存在、陰と陽、プラスとマイナス、犬と猿…は、ちょっと違う。
そんな存在が、世界の不安定な壁を無理矢理ぶち破って異世界へお出かけしてしまったのだ!
水平に保たれている天秤も片方の皿から、安定した均等の要素であるナニカが逃げ出してしまったらどうなるか…もうお解りであろう、バランスの崩壊である。

『このままでは、世界が崩壊してしまう!アルセウスも動けず、今の世界は凄く不安定だ!』
『アグノム、落ち着いて下さい。ミュウに悪気はありません、彼にとってはただ遊びに出かけたと言う感覚なのでしょう。向かった先は、あの軌道が教えてくれます』
『…まさか、別の異世界に。もう勘弁してくれよ』

ドタバタな状況の中で、また更に深刻な事件発生。
ポケモン世界と繋がってしまった世界とは、また違う、今度は何の接点もない異世界へミュウがお出かけしてしまったのだ。
気が遠くなるぐらい長い時間を生きるミュウは無邪気な子供、彼がなす事には大抵意味がなく本人(人?)に悪気はこれっぽっちもないが、それが大体大事件に発展している。
かつて、「ミュウ」と言う名を与えた人間と共に過ごした“気まぐれ”で、彼の細胞をコピーした人工生命体が生み出されてしまったのは、また別の話。

話を戻そう、小難しい単語を全て消去して至極簡単に説明すると、ミュウを連れ戻さないと世界がヤバい!
こう言う事だ。

『ど、どうしよう…アルセウスは動けず、この不安定な世界を放って僕たちが乗り込む訳にも行かない』
『だったらどうする?あいつの気まぐれは続くと長いんだ。このまま、また別の異世界へ行ってしまったら…世界の均衡が崩壊する!』
『……仕方ありません。また、トレーナーとポケモンの力を借りましょう』

ユクシーが出した案、それは…残り3人のトレーナーにミュウを連れ戻してもらう、と言うものであった。
眠りに着いているトレーナーに特殊な空間でコンタクトを取る。
先ず、1人目に打診してみた。

「何で俺が、てめぇらみたいな自称・神の言う事を聞かなきゃならねぇんだ」

縁なし眼鏡越しの悪い目付きで睨まれた、失敗。
次、2人目。

「無理!そんな…ワタシは、神サマにお願いされるほどの人間じゃありませんです!」

ビビられて拒否された、またもや失敗…ちょっと絶望しかけた。

『残り1人だけど…彼女は、無理なんじゃないかな?』
『もう駄目元だ!』

最後、3人目…エムリットがやけくそ気味でミュウを連れ戻す事を頼んだのだ。

「いいよー」
『…え?』
「“みゅう”をつかまえるの?鬼ごっこ?」
『そ、そう…鬼ごっこなんだ!君が、鬼』
「うん!」
「…ドー」
「プク」

三度目の正直、“彼女”が快く承諾してくれたのだ…が、多少問題が。

『い、良いの?!彼女は、確かにポケモンと一緒に巻き込まれたと言っても、幼すぎる!まだポケモントレーナーにもなれない年齢じゃないか』
『だけど、彼女しかいなかったんだ』
『仕方ありません。彼女の保護者を、一緒に向かわせましょう。あと、断られた残り2人もミュウが向かった異世界へ。戦力は、少ないよりはマシです』
『……(ユクシー怖い)』

こうして、ミュウと世界の壁を超えた鬼ごっこをする事になってしまった幼い少女の保護者も、巻き込まれる事となってしまったのである。







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