Searcher本編

□12 Dangerous??
1ページ/7ページ

Searcher〜Dangerous??



前回のあらすじ
『天燐王国』の国宝にしてグルメ界の食材『杏仁流星群』を調理する事になった小松と、ホテルグルメに来訪した女王陛下。
しかし、此処で招かれざるお客が来店…美食會が支部長・ボギー&セドル(なんかユニットみたいだな)と、トリコによる戦闘に発展。
むしろ戦闘による被害の方が大きかったが、ハッカーの介入もあって国宝入りの宝箱は美食會に奪われてしまう。
と思ったら国宝は無事!だが、託児所を抜け出してかくれんぼをしていた子供たちの中で唯一、ノバラだけが見付からない。
それもそのはず、ノバラが隠れていたのは美食會が間違えて奪って行った宝箱だったのである。
と言う事で、彼女の現在地は美食會のど真ん中である…おとーさんの絶叫が、ホテル全体に響いた。





『美食會』第2支部(情報収集チーム)が得た情報によると、『天燐王国』の国宝として厳重に保管されている『杏仁流星群』は、グルメ界に現存するバラ科の植物の仁であったはずだ。
少なくとも、黒髪の幼女の姿をしている訳はないし、ましてや穏やかな寝息でぐっすりと眠りもしない…。
ボスの側近である美食會がギャルソン・アルファロにこれは何だと尋ねられても、奪い取って来た張本人たちにも、頭目検討付かない事態に陥っていた。

「…これは、どう言う事ですか?」
「……あれ?」
「……さあ?」
「“さあ”で、済むとでも……?!」

セドルが首を傾げたがそれで通じる美食會な訳はなく、全身の毛穴が粟立つような殺気に曝されて、彼の八本の腕が愛用の皿をしっかりと握った。
以前、『リーガルマンモス』を巡る四天王との戦いの時、結局獲物を狩る事ができなかったセドルを始めとした第6支部のメンバーは半殺しにされ、新入りが一名死亡した。
失敗=半殺し、もしくは、死…。
副料理長や料理長、グルメ界を主な活動の場としている組織の幹部たちの中でも上位の実力を持つアルファロを怒らせたら、間違いなく後者の運命を辿る事になるだろう。
しかし、言い訳ぐらいさせて欲しい。
本当に、国宝入りの宝箱を手にしたと思ったら中身は幼女だったのだ…国宝の宝箱とホテルの演劇に使われる小道具の宝箱があまりにもそっくりだったと言う偶然、そんな奇跡起きて欲しくなかった。

「ア、アルファロ様!こ、これは何かの間違いで…!」
「オイラたちは、確かにトリコが守る箱を持って来たはずだ!」
「…う〜ん」
「っ!」

幼女を美食會の本部に連れて来てしまった2人も現状を呑み込めないまま、箱の中の彼女が覚醒し始めたのだ。
子供のサイズに丁度良い狭い箱の中でゴロゴロと寝返りを打ち、長い黒髪が寝癖でくしゃくしゃの状態でのっそりと起き上がった。

「うむ〜……おはよう、ございます」
「……」
「…あれ?だあれ?」
「こちらの台詞です」

この小娘、寝起きである事は解るが緊張感の欠片もない…手作りと思われる手提げバッグを抱き締めながら、ショボショボする目をゴシゴシと擦っている。
自身が入っていた宝箱から顔を出してきょろきょろと辺りを見回すが、見下ろしている人たちが父でもなければお店の常連さんでも、美食屋さんでもない。
と言うか、全然知らない人たちに囲まれているし、此処って一体どこだろうか?
託児所の友達と同所を抜け出して、『ホテルグルメ』の中でかくれんぼを始めて、友達に教えてもらった隠れ場所で眠ってしまった事までは覚えている。

「しらない人に名前をおしえちゃダメって、おとーさんに言われています」
「ならば、名前は結構」
「アルファロ様…まさか」
「いくら幼い子供とは言え、知られたからには生かしてはおけません」

これがまだ優秀な料理人ならば使えたが、齢5歳にも満たないような幼女なんて我らが組織に利をもたらさないのだ。
そのまさか…美食會を敵に回さない方が賢明だろう、食べもしない生き物を虐殺しては蝿の集るほど放置しておく奴らである。
任務遂行の邪魔となる障害ならば、この幼女も抹殺対象だ。

「それと同時に、ボギー、セドル。貴方方の処分も検討しましょう」
「ちょ、待って下さいよ!オレたちは、確かに国宝の箱を持って来ただけだ!」
「そうだ!トリコを出し抜いて、手に入れたと思ったら……っ!?って、あのガキがいない!?」

ちょっと目を離した隙に、宝箱の中にいたはずの幼女が忽然と姿を消していた。
最初からいなかった?幻か…って、んな訳あるか。
グルメ細胞によって強化された常人よるも優れた彼らの聴覚、それが聴き取った小さな足音は、とたとたと美食會の本部を歩き回っていたのである。

「直ぐにあの少女を捕まえなさい!」
「「はい!!」」

幼い少女だからと言って絆されるなんてルート、恐らくないだろう。
かつて『アイスヘル』にて、両親と再会を果たした迷子のウォールペンギン――ユンの眼の前で、両親が惨殺された事もある。
そんな鬼たちの魔窟に迷い込んでしまったと言う現実を、黒髪の幼女ことノバラはこれっっっぽっちも実感せずに、好奇心に任せ知らない場所の捜索に繰り出してしまったのである。
そして美食會の本部では、緊急の迷子放送が響き渡った。

『長い黒髪の4、5歳と思われる幼女が本部のどこかを逃走中。見付け次第、即刻抹殺するように』

…これって、迷子放送って言わないよ、ね。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ