POKEBASA本編

□01 異世界へ
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POKEBASA〜異世界へ



世界を創るのは神か、それとも、その世界に生きるモノたちか…?
神話に伝わる神々の能力を使い、新たなる世界・新たなる宇宙を創造しようとした者たちがいた。
その名は『ギンガ団』。
リーダー・アカギの思想に共感し、彼を組織のリーダーとして崇拝した者たちはシンオウ地方全土に混乱と大事件をもたらした。
その大事件は、勇気あるポケモントレーナーと国際警察によって阻止され、アカギは失踪。
それから、『ギンガ団』は壊滅に追い込まれ、何気ない平和な日々が訪れた。



壊滅に追い込まれたと、思われていた―――



その日、捕獲屋・アシビヒナギクはシンオウ地方カンナギタウンの自宅で惰眠を貪っていた。
昨日まで仕事でホウエン地方に出張し、南から北への大移動を経て疲れていたためゆっくり昼まで眠っていたのだ。
昨夜の夕飯に出て来た、長姉の作った美味しい茶碗蒸しを食べると言う食い意地の張った夢を見ながらベッドの海で溺れていると、件の長姉に文字通り蹴り起された。

「ヒナギ!起きなさい!!」
「ちょ、ヒナヅル姉さん、何なの一体…こっちは昨日までホウエンにいたのに…」
「良いから、パソコンが変なの」
「またエラー起こしたの?」

機械音痴の度が過ぎて、アシビ家の機械類を片っ端から御臨終させる姉のそれが炸裂したのかと思ったが、どうやらいつもと事情が違うらしい。
起き立てのヒナギクを、ヒナヅルは首根っこを掴んでズルズキン…じゃなかった、ズルズルと自宅のパソコンのまで連れて行く。
パソコンの前には、長姉・ヒナヅルの手持ちであるブラッキーとエーフィの夫婦が心配そうにその画面を見ていた。

「この子たちのタマゴをオーキド博士のところに送ろうとしたら、いきなりフリーズして画面上のタマゴが消えたのよ!」
「タマゴの数は?」
「五個よ」

『長女触るの禁止!(転送は可)』と言う貼り紙が貼られたパソコンのポケモン転送画面には、フリーズを告げる困った表情のタマザラシが映し出されていた。
ブラッキーとエーフィの夫婦には、既に各々の進化系へと進化を果たした2匹を含め、七個のタマゴが確認されている。
しんかポケモンの名を冠するイーブイの研究のため、知人であるポケモン学の権威・オーキド博士へそのタマゴを譲る約束をしていた。
そしてヒナヅルが先程、パソコンの転送システムでタマゴを転送したのだが…ネットワーク上のボックスにあったはずの五個のタマゴが急に消えて、タマザラシがフリーズを告げたのである。
ヒナヅルの機械音痴が起こしてしまった悲劇かもしれないが、彼女はポケモンたちの転送云々だけは大丈夫だし、これまで何年も使っている転送システムでフリーズなんて一回も起きた事がない。
一体何が起きたのか?
その時、通信アラームが鳴り、タマゴを送るはずであったオーキド博士から緊急の通信が入って来た。

『ヒナヅルくん、ヒナギくん!大変じゃ!!』
「あ、オーキド博士。こっちもタマゴが」
『すまん緊急事態じゃ!この画面を見てくれ!!』

酷く焦った様子でオーキド博士が画面に映し出したのは、彼女たちが住むシンオウ地方を二分する山脈『テンガン山』の山頂だった。
しかし普段と様子が違う…その山頂には、巨大な黒い渦が広がっているのだ。

「何ですか?これ…」
『国際警察からの情報によると、ギンガ団の残党が起こしたようじゃ』
「ギンガ団…キンガ団は壊滅したはずじゃ」

ヒナヅルの言葉にオーキド博士は少しの間を置き話し始める。
これから話す事は、あまりにも非現実的で眉唾物の話だ…それこそ、実際に巻き込まれなければ到底信じ得ない話だった。

『確かに、リーダー・アカギの失踪によってギンガ団は壊滅した。しかし逮捕された団員の話によると、団員の中には反アカギ派とも言える少数派がいたようじゃ。その反アカギ派の全員が逮捕されていないらしい』
「じゃあ、そいつらがこれを?」
『うむ。どうやらあの渦は異世界に繋がっている。反アカギ派の連中の思想は“新たな世界を創造する”ではなく、“別の世界を自分たちで創り変える”と掲げているらしい…』
「??異世界?」
「じゃあ、あの渦の向こうの世界を創り変える気なのね…」
『そうじゃ、しかも困った事にこの渦に多くのポケモンが吸い込まれているらしい。野生のみならず、あの渦が出来たと同時にパソコンの転送システムを通ったポケモンたちも吸い込まれ、行方不明になっているようじゃ…』

国際警察の報告によると、全世界でポケモン転送システムのエラーが発生しパソコンは一斉に凍り付いた。
ポケモンたちの生体反応は、あの黒い渦に一瞬だけ集まったと思ったら消えてしまう…結論を言うと、あの渦の向こうにポケモンたちが消えているのだ。
オーキド博士の話で2人は顔を見合わせ、嫌な予感がしてパソコンを見詰めた。

「まさか…タマゴ…」
『なんと!イーブイのタマゴたちが吸い込まれたのかっ?!』
「何だって?!!」

転送したタマゴたちも、あの渦の向こう側に落ちてしまったらしい。

『そこで“捕獲屋”アシビヒナギクくんに依頼をしたい。これは国際警察からの正式な依頼じゃ。あの渦の向こう側に行き、ポケモンたちを全て回収してもらいたい!』
「了解しました。うちのタマゴたちを取り返すためにも行ってやります!!」

その日、捕獲屋は異世界に飛ぶ。
異世界と言う、想像も付かない場所へ―――







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