POKEBASA本編

□05 戻らない過去、進むべき現在
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POKEBASA〜戻らない過去、進むべき現在



「ユキ?ユキ?」
「おめえ迷子だべか?だったらおらの家に来ると良いだ」

最北端の地、辺り一面白に覆われた空間で出会った笠を被った2人子供。
1人は親とはぐれてしまった迷子のように白い周りを見回し、もう1人はその子に手を差し伸べた。
2人は仲良く手を繋いで木造りの平屋に帰って行った。







***







「魔獣はいなくなった。が…大団円とはいかねえな、秀吉!!」

大坂城を襲ったポケモンたちは全てヒナギクに捕獲され、全ては解決したかに思われたが、まだ残っていたのだ。
決して簡単には解決しない、過去と未来に取り憑かれた男たちの問題が。

「秀吉…何で俺が此処に来たのか…思い当たる節はあるかい?」
「あのことか」
「そうだ……何でねねを殺した?!」

その昔、友であった男たちと彼らが愛した女性。
幸せが続くはずだった未来は、男の無力さによって暗く閉ざされた。
そして最悪の結末……男は愛した女性を、己の最大の弱点をこの手で消したのだ。
最愛の者を捨ててまで手に入れた力は、自身の国を統べる力に、世界に対抗できるための、強い国にするための力に。

それを許さなかった男は追い続けた。
その顔を1発ぶん殴るために。

「慶次!何やってる?!」
「悪いなヒナギ!魔獣はもういない。だが、此処からは俺たちの喧嘩だ!」

朱刀を抜いた慶次は秀吉に向かって行った。
秀吉もそれを受け入れるかのように、両手の拳を合わせ慶次の朱刀を受け止めたのだ。
2人の喧嘩と言う名の戦いは2人の口論とともにヒナギクの預かり知らぬところで進んで行った。

「…何かあったんだな、あの2人」
「そう…過去に留まり続ける男と、過去を捨て未来を見続ける秀吉とのね…」

ブラッキーに進化した月華を抱いた半兵衛がヒナギクの言葉に答えた。
過去にこだわる慶次と過去を捨てた秀吉、2人の喧嘩は既に激闘と呼べるものになっていた。

「ああそうかい………」

その2人に何かがキレたらしいヒナギクは、ボールを取り出し、再びシャワーズを出した。

「『なみのり』!!」
「ひ、秀吉ーーーーー!!?」

シャワーズから放たれた水は2人を巻き込み、今まで激闘を繰り返していた2人は仲良く波に飲まれて城壁に叩きつけられたのであった。
叩きつけられた2人の前に現れたヒナギクは、キャスケット帽で隠れた眼は鋭く、怒りを含んで光っていた。

「ヒナギ!何するん「やかましいわ!!」……!!?」

慶次の言葉を遮ったヒナギクの怒りを含んだ声は、ずぶ濡れの2人に容赦なく突き刺さった。

「あのなあ…人間は過去(むかし)には戻れない、だけど現在(いま)を生きる人間はその過去を受け止めて未来に伝えていかなきゃいけない。かといって過去を見続ければ未来が視えない、だから過去を背負って進んで行くんだ!過去を捨てるな!過去に留まるな!それを全て受け入れて先に進め!歴史の土台の上に現在があるんだ、どんな過去でも土台をしっかり踏みしめて未来に行けよ!!」

ヒナギクの言葉、それは過去を捨てた秀吉と過去に留まり続ける慶次を指しているもの。
過去は決して戻るものではない、消すことのできるものでもない、留まるものでもない、だからどんな過去でも受け止めて現在を生きて未来へ進んで行かなければならない。
今まで誰にも叱咤されたことのなかった2人の間の過去、それを真剣に向け止めたのはヒナギクだけであった。

「………ねねは……我が手をかけた時……笑っておったわ……」



―――慶次……あの人を恨まないで………。



決して過去を振り返らないと決めた秀吉が受け止めた過去…。
それを笑って受け止めたねね…2人の、否、3人の間にあった歴史はこの先の未来への土台として受け止められた。

「秀吉……ねねは、本当にお前のことを愛していたぜ……」


過去は戻らないが振り返ることは出来る。
振り返った過去は進むべき現在に希望をくれるものであるから。







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