POKEBASA本編

□08 魔獣使いの条件
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POKEBASA〜魔獣使いの条件



雪国の人間にとっては雪崩と言うのは脅威であると同時に、時には異邦人から自分たちを守ってくれる災害でもあった。
だが雪崩は自然現象である、どうあがいても人間が自然現象である雪崩を操ることは出来ない。
せいぜい大きな音を出して雪崩を発生させるぐらいしか操るという動作は出来ないのだ。
しかし今目の前にいる女性のような姿をした魔獣と、その魔獣の身体の模様のマフラーを巻いた青年――魔獣使いは雪崩を操ってしまったのだ。
普通の人間なら凄いという感想を呟き、頭の回転が早い者ならそれは脅威であると感じる。
自然を自在に操る魔獣とその魔獣を従える魔獣使いを敵に回したら自分たちは容易く侵略されてしまうと言う事が…。

「あれが魔獣使いか…」
「小十郎、ヨメナをどう思う?」
「味方なら頼もしい、しかし…敵に回せばこれ以上の脅威はないでしょう」
「……All Right」

奥州の双竜が魔獣使いの本質を見抜いたのとは反対に、その小さな身体を張って村を守っていた少女は歓喜の表情で魔獣使いに近づいた。

「ありがとうだべ!お陰さま助かっただ!」
「いえ…しかしあの女には聞きたいことがあるので……!!?」

大量の雪によって出来た雪山から鉱石のように光る一筋の光が雪を砕き、その衝撃で出来た穴からは巨大な女王の風格を持つ蜂が出てきたのだ。

「ビークインの『パワージェム』…!」
「新手か?!」

『パワージェム』に穴を開けられた雪山からは、闇のような毛並みを持つ烏にその身を任せたボロボロのアフロディテが出てきた。
どうやらあの『ゆきなだれ』の衝撃の中で別のモンスターボールを開いたらしい。

「この予想外野郎!!あんたがいなけりゃこんな不効率な展開にならなかったのよ!!覚えてらっしゃい!!ビークイン、ヤミカラス、撤退するわよ!!」

そう吐き捨てると、蜂と烏とともにアフロディテは奥州の雪雲の中に消えて行った。

「また来るか……」
「あの女…ただじゃおかねえ…!」

散々奥州の地を荒らして行ったアフロディテに嫌悪の表情を露わすのも人それぞれであったが、今の危機が回避された時点でこの状況の1番の功労者は魔獣使いであることに気付いた。

「ヨメナ、お前はこれからどうする?」
「引き続き“探し物”を探します。しかし見つかっても帰るに帰れませんが…」
「だったら、うちの軍に来ねえか?」
「っ?!政宗様!」
「……折角の申し出ですが遠慮しますよ」

宿無し、当て無し、一文無しのヨメナにとっては政宗の申し出はありがたいものではあったが、政宗は若くして奥州を統べる伊達家の当主である。
いくら当主であったとしてもこの世界では“異質”である魔獣とその魔獣を連れている魔獣使いである自分を受け入れるだなんて、当然下の者特に彼の隣にいる小十郎と言う人物が許すはずはない。
そしてあの女――アフロディテに目の敵にされてしまった自分が1カ所に留まるなどそこを狙って下さいと言っているようなものだ。

「これ以上魔獣のことで政宗殿にご迷惑をかける訳にはいけませんからね」
「んな事言う「ユキーーーーー!!!」…って何だ?!」
「雪助!家にいろって言ったべさ!」

政宗の言葉を遮って聞こえたのはヨメナといつきには聞き覚えのある声であり、その他にとっては奇妙な声であった。
声の主はいつきの足元には笠を被った黒い顔の小さな子供、否、子供のような姿の魔獣であった。
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