POKEBASA本編

□10 迫る影、傍にいたい想い
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POKEBASA〜迫る影、傍にいたい思い



中国地方安芸の国、厳島神社の恩恵を受けるその地に建つ高松城では、瀬戸内海を挟んで長年睨み合っていた毛利、長曾我部の両雄が向かい合っていた。

「四国の港も尽く荒らされた…。船は沈められ、潮の流れまで変っちまった。此処に来るまでもどんだけ苦労したか…。こりゃもう人間業じゃねえ」
「魔獣…海を荒らす魔獣の存在。しかとその姿を捕らえねば瀬戸内海はこれからも荒れるであろう」
「ぷぷう〜」
「小梅(コウメ)…何も全ての魔獣が悪いとは言わねえ」
「しかしこれ以上の被害は中国、四国の疲弊にしかならぬ」
「一時的とはいえ、これは立派な同盟だ。よろしく頼むぜ」
「仕様が無いとはいえこのような鬼と手を組むとは…」
「エーフィ〜」
「何だその言い草は!!けれど…島津の爺さんとの連絡はとれたのか?」
「…未だに取れてはおらぬ。九州に多くの魔獣が現れたとの情報が入りはしたがな」

中国、四国、九州で結ぼうとした同盟、それは魔獣に対しての防衛策の1つであった。
しかし九州の島津義弘と連絡が取れず、中国と四国の間で同盟が結ばれることとなる。







***







「悪いヒナギ!なんか奢るから許してくれ!!」
「じゃあ仕事の後に近江の名物を奢れ!それで許す!あとたまには家に帰って叔父さんたちを安心させてやれ!」
『ヒナギの食い意地が張っていて助かった…』
「キキッ」
「チェリ…」

前田夫妻+ピンプクとの熾烈なチェイスから何とか逃げ切ったヒナギクと慶次は宿で一泊した後、浅井長政の居城である小谷城の門前を訪れていた。
思わず家庭内の追いかけっこにヒナギクを巻き込んでしまったが、どうやら許してくれるらしい。
近江の城下にて例のタマゴの情報を聞き込むと、浅井長政の妻であるお市の方が大きなタマゴを孵していると言う噂は本当の事だった。
しかし噂を聞く限りそのタマゴはヒナギクの探していたイーブイのタマゴではないようだ、人々が噂しているタマゴの模様から判断したのだが、探しているタマゴじゃ無かったからと言って放っておく訳にもいかない。
慶次の話では浅井長政という人物は戦に魔獣を利用しようとする人物ではないようだが、浅井の背後にはこの世界最凶の軍である織田がいる。
最悪の場合はタマゴを回収しなければならない。

「で、此処の城主とは知り合いなんだろ?」
「おう、浅井サンに話しを付「キャァァァァァ!!」…何だっ?!」

文章にするならば絹を裂くような女の悲鳴。
それは目の前の門の内部、小谷城の中から聞こえてくるのだ。

「何かあったのか…?!行くぞ慶次!!」
「待てよヒナギ!」

門番の制止も聞かず、強制手段(と言う名の力ずく)をも行使し強引に場内に突入する。
悲鳴の正体が魔獣、それもタマゴが孵ったための悲鳴であれば産まれたばかりの魔獣に何があるか解らない、野性の魔獣が入りこんだのならば捕獲しなければならない。
何かあっては遅い、人間にとっても魔獣にとっても。

そして小谷城で何があったのか。
それは女中たちが働き周る厨房で起こったことであった。
女性がそろえば姦しいと言うか、今日も今日とて自分たちが働いている城の城主と奥方を話のネタにしながらお喋りと仕事に精を出していた。

「それで長政様ったら相変わらずなのよ〜」
「素直になれば良いのにね、姫様とはどう見ても両思いなのに」
「見ててじれったいわね……え?」

女性が見たのは手、そう手。
黒い、人間の物ではない、壁から生えている…手……。

「き……キャァァァァァァ!!」

手が壁を抜けると、次は顔。
黒い人間とは思えない顔、目はつり上がり、口は赤く裂けている。
例えるならば黒い亡霊、宙に浮いている黒い両手はこの城の奥方の婆娑羅を連想させた。

「ゴス?」

それは魔獣、魔獣の中でもある意味特殊な位置付けにもあたる幽霊……ゴーストタイプ……。







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