Liberator本編

□06 漂流 の エンジニア
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Liberator〜漂流 の エンジニア



空が青ければ海も青い、今日も潮風が陸地に吹き込んで海の恵みを運んでくれる。
戦国時代において海と言うのは魚や貝などの海産物をもたらしてくれるだけではなく、交易や交通の要であり海を支配すると言う事はそれら支配するのと同等であろう。
だからこそヤマトアツムタケ忍者やドクタケ忍者などは、その海の支配を得ようとしているのだ。
海は誰のものではない、恵みを与えてくれるが時には人間に牙を剥いて襲い掛かる大きな生き物のようなものだろう…海の向こうの国では、海は万物の母ともいわれている。
海外からの交易の海路に使われている瀬戸内海、このルートを通り商人たちは堺などの商業都市へ商品を運ぶのだが、この海の平和を守っているのが兵庫第三協栄丸率いる兵庫水軍だ。
そして、昨日海は荒れていた。

「昨日の嵐は凄かったな〜今日の風向きはどうだ?」
「今のところ波は穏やかです。今日立つ船の進路に、問題はないでしょう」
「お頭〜」

優秀な山立(航海士)である鬼蜘蛛丸の読む波風にハズレはない、交易の要所に立ち寄る船は無事に出発できるだろう。
それよりも、昨日の嵐に破壊された兵庫水軍の船や流れ着いた異物の回収が先、出港した船が変な物にぶつかって沈没なんて洒落にならない。
早速部下たちに指示を出そうとしたら、一番の若手である網問が呼びに来た…何でも、奇妙なものが岩場で身動きが取れなくなっていると言う。
で、その岩場に向かったのだが…。

「…何だ、アレ?」
「亀の甲羅…でしょうか?」

だったら、岩場で身動きが取れなくなっているのは海亀だろう。
普通の海亀なら珍しくもなんともない、長く船の上で生活する事もある海賊たちにとって海亀の肉は貴重なタンパク源だ。
が、その甲羅と言うのが…何か違う。
海亀の体長と言うのが、大きくて五尺(約151cm)ほどありこの甲羅もそれぐらいの大きさであるが、見慣れている甲羅とは違ったのだ。
平べったいはずの海亀の甲羅と比べると、なんて言えばいいのか縦に大きい。
もし鼈甲を作るのなら高価で取引されるだろう、だけどそう簡単に装飾品にされない威圧感が、この甲羅から放たれているのだ。

「ね、奇妙でしょ。どうします、お頭?」
「どうするって言ったって…」
「もしかしたら、こいつ…入亀入道じゃないか?」

入亀入道とは、亀の甲羅に和尚の顔をした海の妖怪である。
別名・和尚魚、この姿を見てしまうと不吉な事が起きるとされており、それを回避するためには酒を与えて海に還せば良いらしい。
妖怪や幽霊に弱い疾風が途端に逃げ腰になるが、よく考えてみろ、妖怪を使ってこの海の覇権を奪おうとした連中の事を。
もしかしたら、ドクタケかヤマトアツムタケが再び暗躍を始め、ハリボテの亀を使って妖怪騒ぎを起こそうとしているかもしれない…そう考えて件の亀を観察してみると、見るからに異質ではないか。
慎重に扱いながら岩場から出そうと、第三協栄丸が部下に指示を出そうとしたら水をバシャバシャと弾く音がする。
そちらへ顔を向けると…甲羅の上に人間の腕、しかも海の中から這い出て来るように海面から姿を現し、びしょ濡れで髪が下りた人間が姿を現したではないか!

「でででででででででで出たーーーーーー!」
「妖怪だあぁぁぁぁぁぁ!!」
「…じゃ……ね……」

いい歳したオッサンたちが絶叫して逃げ出して、海へ還そうと妖怪(暫定)へ酒をぶちまけた。
で、甲羅の裏から這い出て来た人間は、海水を吸い込んで喉が荒れていなければこう叫んでいた。
俺は、妖怪じゃねえ!







***







太陽がてっぺんと西の中間に位置する時刻、大八車を引っ張る3人組はご存じ、乱太郎・きり丸・しんべヱの一年は組の良い子たちだ。
彼らは食堂のおばちゃんのお遣いで、兵庫第三協栄丸から新鮮なお魚をもらいに行く途中である。

「今日の晩御飯は、美味しいお魚〜♪」
「兵庫第三協栄丸さんたちに会うのも久しぶりだね」
「最近色々と忙しかったかなら〜」

此処最近、“ポケモン”や“ポケモントレーナー”に関する騒動のために学園は揺れていた…と行っても、学園長の突然の思い付きや、彼らが持って来るトラブルと比べたら微かな騒動であったけれど。
ちなみに、忍術学園では朝と昼は食堂で食べる事ができるが、生徒たちは長屋にある厨房で組ごとに晩御飯を作る事になっている。
それでも、食堂に入って来た食材や今回のように親しい海賊さんたちから譲られた魚などは生徒たちにも配分されるため、食材には困らない。
だけどまあ、当番の人選によっては野菜丸ごとの味噌汁ができたりするけれど…と、当サイトは若干の原作寄り設定で行います。

「お魚をもらって忍術学園に帰る頃には、八つ時(午後3時前後)ぐらいかな」
「はっ!急いで帰れば、ディルさんのお菓子が食べれるかも。乱太郎、きり丸、急ごう!」
「ってしんべヱっ!?」
「うわあぁぁぁ!?」

大八車を後ろから押していたしんべヱの食欲に火が点いてターボ全開、その怪力で乱太郎ときり丸まで乗せた大八車はあっと言う間に海に到着したのだ。
早くお遣いを終わらせて、学園長専属のパティシエールが作った美味しいお菓子をもらいたい、うかうかしていたら他の人に食べられて品切れになってしまうのである。

「兵庫第三協栄丸さん、お久しぶりでーす」×3
「おお!乱太郎、きり丸、しんべヱ、よく来たな」
「食堂のおばちゃんのお遣いで、新鮮なお魚を頂きに参りました」
「ちょっと待ってな、今日も良い魚がたくさん捕れたぞ。オレガノー!」

第三協栄丸に呼ばれてこちらにやって来たのは、肩に猫を乗せた、3人組が見た事もない海賊さん(?)だった。
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