Liberator本編

□08 決着 の 付け方
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Liberator〜決着 の 付け方



よく考えてみれば、室町世界――この戦国乱世の時代に異邦人たち…ポケモントレーナーと、そのポケモンたちが急に現れたのは実に不可思議な事であった。
アスターがディルに問いかけた“理由”や“意味”があったのか?それとも、魔獣使いとも呼ばれた彼らはただそこに存在するだけなのか?
何故此処にいる…?
兵庫水軍に拾われてから、水平線の彼方をボーっと眺めていたオレガノも、その疑問を幾度となく感じていた。
その疑問は、突如現れた4人目…正確に言えば、最初の存在であるフィットニアの登場でその理由は判明する。
学園長の庵に4人で閉じ籠り、彼女の口から出て来た真実は驚く暇もないくらい、息を吐く暇もないぐらい怒涛の展開へと押し上げられた。

「……ポケモン世界の、18番目のタイプ」
「零れ落ちた、ポケモンたちのタイプエネルギー」
「それが、さっきみたいに大暴走を起こすから、俺たちが解放しろと?……何でそんな突拍子もない展開なんだよ!?」

オレガノの言う通りである。
此処は次元とかの壁を超えた異世界、いや、そこからもう思考が超次元過ぎて付いていけない。
フィットニア以外の3人は、この室町世界はポケモン世界の一部であると思っていた…自分たちが知っている地方や地域とは遠く離れた、奇跡的にポケモンたちが生息しない遠方の地であると。
だけど真実を知ったらどうだ?
ポケットモンスターと言う、自分たちが生きる世界の根本にある彼らさえ存在しない、繋がりも細く微かな異世界だと告げられてしまったのである。
声を荒らげたオレガノだけではなく、ディルもアスターも若干の混乱を見せて考え込んでいる…そりゃそうだ、急に御伽噺のような突拍子もない事を真実であり現実だと告げられたらそうなるだろう。
此処で、フィットニアの持つ特殊な能力の説明をしたらもっと混乱を起こしそうだと、少しだけ休息を入れた。

「学園長先生、私の話…理解して頂けたでしょうか?」
「……」
「学園長」
「……ZZZ」
「寝とる!」
「学園長!」
「ふがっ」

腕を組んで目を瞑っていると思っていたら、寝ていた…超次元な話は、年寄りにはちょいとぶっ飛んだ内容でした。

「ふむ…フィットニアとやら、話は聞かせてもらった」
「ちゃんと聞いていたんですか?」
「アスター、黙らっしゃい!詳しくは解りかねぬ内容もあったが、この国に大きな災害が迫っている…それは理解した」
「っ!同じですよね。忍術学園は、この戦国時代の戦力均衡を崩壊させたくない…大きな人為的災害を起こして、子供たちを危険に曝したくない。だから、ポケモントレーナーを匿って他の城に渡さないようにした。一年は組のあの子たちが巻き込まれたように、エネルギーの暴走が起きてしまえば国一つが消滅する可能性もあります」

今回、乱太郎、きり丸、しんべヱの3人が巻き込まれた『地面』タイプの暴走は、地面の陥没と隆起と地震と言う自然現象に留まったがエネルギーが一体どんな暴走を起こすかは全く予測できない。
残るタイプは17種、それぞれ弱点も違うし多岐に渡る能力があるのは、ポケモンたちの豊富な能力を見ればお解りだろう。

「ポケモントレーナー――魔獣使いたちを保護したのも何かの縁として、此処忍術学園を拠点とする許可を頂けませんか?」
「それと…フィティ、貴女1人で全部やる気?」
「…私1人では不可能だと思います。あの、あの…もし、よろしかったら」
「良いよ。私も協力する」
「こんな可愛らしいお嬢さんの頼みなら、喜んで」

何気なくさりげなく、フィットニアの肩を叩いたディルに手を取ったアスター。
頭の中に流れ込んで来た膨大な情報と熱量は大体消化できた、そして解った事は、このあどけなさの残る少女だけに背負わせるのはあまりにも酷だと言う事。
ポケモンたちと共に生きて旅をしていれば、想像も付かない現実がこの身に降り注ぐ事もあるだろう…それが今、起きただけの話だ。

「もう、異世界に来たとかどうでも良いよ。さっきみたいな、エネルギーの暴走?あれが起きたらたまらない。私たちの世界からの迷惑なら、尻拭いしないとな」
「袖振り合うのも多生の縁。コガネにいた偶然は運命…ディルちゃんやフィティちゃんみたいなレディと会えたのも、この冒険に繋がっていたと思えば楽しいよ」
「…俺はパス」
「っ!な、お前…」

ディルとアスターが協力してくれると頷いたが、オレガノだけは首を縦に振ってくれなかった。
先程の『地面』エネルギーの騒動で負った頬の掠り傷に貼られている絆創膏、その上から頬を掻くとジト目気味の視線でフィットニアと視線を交差させる。

「…ポケモン世界だか戦国時代とかよく解らないが、同じ“ポケモントレーナー”と言うだけで協力とか、虫が良すぎると思わないのか?」
「お前、オレガノとか言うたな。女の子が頑張っているのに、男が手を貸さないなんて失礼だろうが」
「…普通はそうですよね、私たちは全く関わりのない赤の他人なんですから」
「フィティちゃん」

オレガノの言う通り、虫が良すぎる話だ。
同じ志を持とうとも他人は他人…仲間になってくれれば嬉しいと思っていても、世界の命運をかけて共にエネルギーを解放してくれと言う手伝いはあまりにも重い。
だけど…。

「オレガノ君、私とポケモンバトルをして」
「バトル?」
「エネルギーの解放に協力するか、しないかは、バトルの後にもう一度返事を…」
「…解った。ポケモントレーナーがバトルを断る理由は、ない」

これも一つのトレーナーの性と言うだろう、彼らの決着の付け方は実にシンプルであり、トレーナー同士でしか解り合えない事もある。

「ほう…面白い事になったのう」
「学園長、楽しまないで下さいよ」

今日の3時のおやつ、なしにしてやろうか。
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