POKETENI本編

□01 地震と猫と簪の彼女
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POKETENI〜地震と猫と簪の彼女



月が照らす闇夜の大阪城の天守閣に捕獲屋はいた。
隣にいるのは自分の初めての魔獣――ポケモントゲキッス、自分の手でタマゴから孵した大切な相棒だ。
この戦国世界に来てたくさんの協力者や戦友も出来た、捕獲の仕事も良いペースで進んでいる。
けれど…やはり少しはホームシックという感情に罹る、今見上げている硝子の欠片を散りばめたような星空は自分の世界と繋がっているような錯覚もしてしまう。
ふと思い出すのは世界中を飛び回っている両親よりも2人の姉たち、ジョウト地方に行って歴史の勉強をしている次女と自分の師匠である長女、特に今日はその長女であるヒナヅルの事を思い出した。
彼女は自分の姉であり、母であり、師匠であった。

世界を忙しく飛び回っている母よりは姉に育てられた記憶の方が多い、その関係でヒナヅルは母の弟子であったが、自分の師匠はヒナヅルだった。
しかし彼女は捕獲屋を引退してしまった、2年前ホウエン地方に仕事へ行ったきり数カ月行方不明になったと思ったらひょっこりと帰って来てそう宣言したのだ。
しかも彼女のトレードマークとも言える長い黒髪をバッサリと切って帰って来て…あの時の衝撃は大きかった、一体何があったんだと。
でも今なら少し解るかもしれない、ヒナヅルの中できっと何かが変わったのだ、行方不明になった数カ月間で。
そしてよくよく思い出したらヒナヅルが行方不明になった直後に各地でポケモンたちの数が減少しているという話がニュースでやっていた……。
もしかしたら、姉も自分と同じように異世界に迷い込んだポケモンたちを捕獲する仕事をしていたのかもしれない。
自分のように誰かから依頼を受けたのではなく、成り行きで、きっと彼女もポケモンたちと一緒に巻き込まれたんだ。

3年前のあの日、ホウエン地方全土を巻き込んだ自然大災害、グラードン、カイオーガ、レックウザの三つ巴で発生したあの大事件に……。







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