POKETENI本編

□03 捕獲屋とテニス部とポケットモンスター
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POKETENI〜捕獲屋とテニス部とポケットモンスター



「本当にみんなに言っちゃうの?」
「うん、色々見られてるし…詮索されても困るからいっそのこと全部言っちゃう」
「思いきったね…」
「それにポケモンの事、もっと知ってもらいたい」

リョーマ&エネコ誘拐事件は土曜日の出来事だった、その日の夜偶然再会した異世界の迷い人である捕獲屋、アシビヒナヅルがリョーマの前に現れたのも。
1人で全てを抱え込んでいた彼女が吐き出したその衝動、孤独と責任感とプレッシャーが入り混じったヒナヅルの胸中の全てを吐き出してから、彼女はそのまま越前家に迎え入れられた。
その経緯は後々語るとして、翌日の日曜日、ヒナヅルはリョーマに頼んで昨日ポケモンを目撃した竜崎を含めた全員を集めて貰った。
あの場にいてバルジーナやヒナヅルのムクホークを目撃した彼らに全てを伝えるために、自分の事、この世界に迷い込んでしまったポケモンたちの事を…。
ポケモンを珍獣として認識し、下手に好奇心で近付いたら彼らの技によって怪我をしたり事件になっては遅い、ポケモンはこの世界の動物とは持っている能力が違うのだから。

「それに、リョーマの話を聞く限りじゃ、みんな良い先輩と顧問の先生なんでしょ?彼らならポケモンを受け入れてくれる…そんな気がするの」
「ニャ!」
「お前もかよ…」

すっかりリョーマに懐いてしまったエネコ(元々野生)を連れて、ヒナヅルとリョーマはテニス部の部室で待ち人たちを待っていた。
一方、休日だと言うのに生意気な1年生レギュラーに呼び出された他のメンバーたちはテニスコートに集まっていた。

「『昨日の事で話がある』って…越前は何かを知っているのかな…?」
「昨日の事…あのハゲワシの事かな?」
「聞いてみれば解るんじゃないか」

若干の好奇心を抱え、大石が部室のドアノブに手をかけて回すと何時ものように部室のドアは開いた。
が、その開いたドアの隙間から見えたのは黒い身体に赤い目、人間の物ではないと一目で解る異形の存在が隙間からこちらを覗き込んでいたのだ。

「うわぁぁぁ?!」
「コラ、ゲンガー!やめなさい!」
「ゲンガッ♪」
「ごめんね、この子悪戯好きだから」

まるで悪魔の様な、影の化身の様な外見を持ったそのゲンガーは悪戯が成功した子供の様にその場で跳ね上がると、1人の女性の背中に飛び乗った。
そして部室の入り口に寄って来たのは犬とは違うスラリとした体型を持った黒と薄紫のよく似た生物と、見覚えのあるピンク猫を抱えたリョーマの姿があったのだ。
ゲンガーによって驚かされて尻もちを着いてしまった大石に手を差し伸べたのは、背中にゲンガーを乗せた黒髪の女性。
履いているブーツで女性にしては背が高く見えるその女が着けている珍しい造りの白い羽の簪には見覚えがあった、そう、ごく最近彼女と出会ったのだ。

「貴女は昨日の…」
「こんにちは、テニス部のみなさん。私はアシビヒナヅル…別の世界から来た捕獲屋です」
「ニャー!」

昨日、突如としてリョーマと猫を攫って行った鷲を追って行ったら、そこにいた謎の女性…彼女は鷲へ攻撃を加えていた鷹と、攫われて行ったピンクの猫と共に去って行った彼女であった。
どうして彼女がリョーマと共にいるのか?昨日の鷲や、背中のは一体何なのか?聞きたい事はたくさんあったが、ヒナヅルは全てに答えてくれた。
彼女がいた世界の事、そしてこの現代世界に迷い込んでしまった発端の事件の事を…。







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