POKETENI本編

□08 用具庫とテニスと拡声器
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POKETENI〜用具庫とテニスと拡声器



中学生の体育と言うと、身体を動かせて好きだと言う意見と、身体を動かすのが面倒臭いと言う意見に分かれる、後普通と言う意見とか。
とりあえず昼近くの体育の授業は腹が減る、成長期である中学生なら尚更だ。

「仁王!さっさと片付けてメシに行くぞ!」
「プリ」

本日の4時間目、立海大付属中学では3年A組とB組の合同体育が行われブン太と仁王は授業で使った機材を片付けるため用具庫にいた。
腹減っているし昼休みだしでさっさと終わらせたいブン太だったが、用具庫の中で仁王が奇妙な事に気付いた。

「ブンちゃん…跳び箱は5台じゃろ」
「ん…1、2、3…6台だろ」
「ほう」

しかし仁王の記憶では用具庫に置いてある跳び箱は5台の筈、しかし現に6台の跳び箱が置いてある。
何時の間にか増えたのかと思ったが、新しい跳び箱を購入したと言う話しは聞いていない、じゃあこの6台目は一体何なのだろう?
そう思って6台目の跳び箱を凝視していた仁王だったが、その凝視されている跳び箱が何故かだんだんと冷や汗をかき始めたのだ。
詐欺師の異名をとる程目敏い仁王がそれに気付かない訳無く、色々な角度で跳び箱を凝視し続けて一種の結論に辿り付いた。

「ピヨ」

この日仁王は学食、つまり海風館に現れず逆に購買に現れたらしい。







***







授業もすっかり終わり、学生たちのゴールデンタイムである放課後がやって来る。
真田も何時ものように部活があるのだが、本日は風紀委員会の集まりがあったため同じ委員の柳生と共に少し遅れて部活に出向いていた。

「そう言えば真田くん、午後に仁王くんを見ましたか?」
「いや、体育の授業の後に別れてそれきりだが」
「午後から彼の姿が見えないと丸井くんが言っていました。きちんと部活に来ていれば良いのですが…」
「授業をサボるとは…全くたるんどる!」

どうやら午後の授業を丸々休んだらしい詐欺師にご立腹しながらテニスコートへ向かったが、そのテニスコートが随分と騒がしい。
時にはテニス部のファンクラブが練習模様を見に来るのだが、今日の騒ぎはそれ以上だ。
しかも女子生徒だけでは無く、部活途中の他の部活の生徒たちも練習着のままコートのフェンス前に集まっている。

「あいつ凄え」
「何なんだ、あの動き…人間か?」
「…何かあったのでしょうか?」
「そう言えば幸村も柳も遅くなると言っていたな」

そう、本日は委員会や生徒会の集まりで三強が部活に集まるのが遅くなると言う日であったが、そんな日にこの人だかり…何かありましたと言っている様なものだ。
そんな人だかりでコートが見えない真田と柳生を、この騒ぎに集まっていた同じクラスの女子が見付けるとこの真相を確かめるべく彼らの元へ来た。

「真田くん、あの切原くんと互角に打ち合ってる人って、テニス部のOB?」
「赤也と互角だとっ?!」
「そうだぞ真田、しかも赤目の切原とだ!」

そう言って割り込んで来たのはやはり同じクラスの男子生徒、その言葉に再び2人は驚愕する。
赤目モードの赤也の集中力、運動能力はずば抜けており超攻撃的なプレーになる。
しかも相手の身体を直接狙うスマッシュなど卑劣とも言えるプレーになる…しかし、この人だかりの向こうにいる対戦相手はその状態の赤也と互角に打ち合っていると言うのだ。

「相手の特徴は?!」
「青いジャージの人、明るい茶髪で高校生くらい」
「でもあのプレースタイルはテニスって感じじゃねえな、アクロバティックすぎる…」
「アクロバティック…氷帝の向日くんと似たようなスタイルの方でしょうか?」
「……青いジャージに明るい茶髪…それはまさか琥珀色ではないか…?」

何だか頭に過り人物像が浮かんだ真田だったが、その琥珀色の髪と言うキーワードに女子生徒はそれを肯定する。
そしてアクロバティック、テニスのスタイルではない…?

「そうよね、琥珀って感じの髪の毛」
「それに何だかうさぎみたいな生き物が傍で応援してんだよな」
「うざぎ…?」
「そうそう!頭にタオルを巻いてて、そのタオルに変な社名が書かれてるの。確か…『カイリキー建築』だったかな?」
「……」

青いジャージ、琥珀色の髪の毛、応援をしているうさぎみたいな生き物、そして頭に巻いている変な社名のタオル…。
間違いない、アイツだ…この人だかりの奥で立海のルーキーと互角に対戦しているのは、真田の頭に浮かんだアイツで間違いないと結論付いた。
何故此処にいるのかと聞きたいが、どうして赤目の赤也と互角に対戦しているのか、そもそも何故赤也と打ち合っているのかを一刻早く理由が聞きたい。
人混みを掻き分けてコートに入った真田と柳生は、その青いジャージの人物を目撃し真田がやって来た事に気付いた2匹のうさぎが飛び付いた。

「プラー!」
「マイー!」
「やはりお前たちだったのか、奴は一体何をしている?」
「真田くん、そのうさぎさんたちとあの方はお知り合いでしょうか…?」

真田の肩に飛び乗ったプラスルとマイナン、モモとアイが見つめる先はテニスコート、つまり赤也と対戦している軽業師ソテツである。
コートを縦横無尽に動き回る彼は、どうしてこんな事になっているのだろうか…?





「にゃー」
「ほう、生き物にもなれるようじゃの。ほれ、メロンパンナリ」
「にゃー♪」







***
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