POKEBASA本編

□03 襲撃、大坂城
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「岩の蛇だーーーー!!」
「石が、石が動いてる!!」
「半兵衛、無理をするな」
「大丈夫だよ秀吉。だけど…魔獣は予想外だったね」

大坂城の城門は壊滅状態であった。
岩井が引き連れてきたのは岩の蛇と石の魔獣たち、それらが暴れまわって全てを破壊しているのだ。
豊臣の兵たちは現れた魔獣たちにどうすることもできず、士気は無に等しかった。

「豊臣、お前らを全て破壊してやる………!行け!魔獣ども!!」
「岩井め……我が城を攻め込んだ報いを受けさせてやろう!」

人間を動かす原動力の1つに『恨み』や『憎しみ』がある、それを纏った人間の狂気と言うのは時に信じられないほどの現象を起こしたりする。
今回、大阪城を襲った岩井も戦などましてや豊臣に対抗しようなどと言う気力の起きないほどの男であったが、豊臣から受けた屈辱に一領主としてのプライドはズタズタにされた。
積りに積もったその感情は魔獣を手にしたというキッカケで爆発した。
そして今、復讐に取りつかれた男は魔獣という兵器で大坂城に乗り込んだのだ。

しかし秀吉も負けてはいなかった。
日ノ本の未来のためにこの国を統合しようとする彼の強い意志は未知の魔獣に対抗するための対策が無くとも、立ち向かうためのエネルギーになるには十分であった。
秀吉は石の魔獣に拳をぶつけたがその魔獣の持つ本当の岩のような硬さは彼の自慢の拳さえも跳ね返した。
本当の岩なら彼の拳で砕け散っていただろう、しかし魔獣は生きている。
生きているその生物たちの身体は本物の岩以上の強度を誇っていた。

「秀吉!!…ゴホッ」
『どうにかしないと…まずは魔獣をよく観察しなければ…』

いくら半兵衛が天才軍師と呼ばれても、それは人間同士の戦に関しての評価であった。
もし彼が魔獣に精通していた人物であったなら持ち前の頭脳を駆使してこの状況を打破していただろう。
しかし噂にしか聞かない魔獣、しかも見た事のない岩の身体を持った彼に対する知識も何も持たない自分たちに勝ち目がないのは見ての通りであった。
こんな状況でも彼が患っている持病は休息をくれない。
半兵衛が咳き込み、膝をつくと、その隙を見逃さなかった4本の腕を持つ石の魔獣は半兵衛に向かって突進してきた。

『…っ間に合わない!』
「ブイーー!」

半兵衛に突進してきた魔獣は、横から放たれた黒いエネルギー体によって吹っ飛ばされた。
そして、魔獣を退けたのは半兵衛が稲葉山城に置いてきたはずの存在であった。

「月華!付いてきたのか」
「ブイー!」

月華と呼ばれたのは茶色の身体に首周りには白いフサフサの家が巻いている犬…否、魔獣だった。
しかし、今の月華の攻撃で完璧に頭に血が上ったらしい魔獣は、その4本の腕で月華を半兵衛に向けて投げ飛ばし、1人と1匹を城壁に叩きつけたのだ。

「もう…此処までなのか……すまない、秀吉」
「半兵衛!!」

魔獣は半兵衛と月華に向かって再び突進していった。
もう此処までかもしれない、半兵衛の頭をよぎったのは自分が見たかった戦友が導くはずであったこの国の未来の事であった、が……。



「トゲキッス!『はどうだん』!!」

しかし魔獣は空から放たれた攻撃によって再度吹っ飛ばされた。

「あ、新手だぁ!!」
「誰か乗ってるぞーーーー!」
「あれは…慶次…?」

豊臣と岩井の兵士たちが見たもの、それは戦場には不釣り合いの純白の鳥であった。
その鳥その純白の身体を広げて戦場に降り立つと、乗せていた2人の人間を降ろした。

「よう、秀吉。随分派手にやられてんじゃねえか」
「イシツブテ、ゴローン、ゴローニャ、そしてイワーク…岩井だけに岩タイプでそろえたか…さっさと捕獲させてもらうよ!!」

降り立ったのは慶次とヒナギクであった。
ヒナギクは被っているキャスケット帽をもう一度被り直すと、背負っていたリュックの中から小型のバズーカと、腰につけているモンスターボールを手に取った。

「さあ、仕事の時間だ」

異世界に来てから初めての“捕獲屋”の仕事であった。







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