短編
□眠いのです
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王子さまは気まぐれだ。
人を部屋に呼んどいて自分はさっさと寝てしまうなんて。
用件なんか伝えられていない。
ただいきなり電話をしてきたから急いで任務を終わらせてきたのに。
気持ち良さそうに寝息をたてているベルセンパイを起こす気など起きず、静かにベッドの横に座った。
蜂蜜色の髪を指に巻き付けたり、軽く引っ張ったりして遊ぶ。
綺麗な金髪だなー。
ミーの髪とは違う透き通るような金色に目を細める。
「ん…、フラン?
なんで?どしたし」
眠そうにあくびをしながらベルセンパイが起き上がる。
「おはようございますー、なんでって聞きたいのはミーの方ですよー」
ミーの言葉にセンパイは思い出したらしく、あぁ、と呟いてベッドに吸い込まれるように倒れてしまった。
ミーもつられて隣に倒れる。
ベルセンパイの匂いが鼻孔をくすぐる。
ベルセンパイに抱き締められてるみたいでなかなか悪くないですねー
でもやっぱり本物のほうが良いのでセンパイの細い腰に手を回して、体を寄せた。首筋に顔を埋め、鼻を鳴らす。
その状態のままでいると、センパイの高い体温が助長してミーまで眠くなってきた。
このまま寝ましょうかね。
そう思
い、重くなってきた瞼を素直に閉じようとした時、
グサッ
と、いい音をたててミーのカエルにナイフが刺さった。
「…カエル、邪魔」
「じゃあ取りますねー」
「それは駄目」
「じゃあどうすればいいんでしょうねー困りましたー」
この後に言われる台詞は予想ついていたけれど、この時間を少しでも伸ばしたくて無駄なすっとぼけで返す。
そんな悪あがきに堕王子が気付くはずもなく、扉のほうを指差して、「帰れ」と一言吐いた。
はぁ、やっぱりですかー
予想的中したことに嬉しさなんて感じるはずもなく、センパイから手を離し、のそのそと扉に向かって歩き出した。
「おやすみなさーい、良い夢を」
「…おやすみ」
(結局、用件ってなんだったんでしょうねー)
(あー、ねむ)