クロスライダー W&OOO

□W編第二話
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 殴り飛ばされたカーボン・ドーパントをWが追いかける。そのまま追撃の蹴りをお見舞いすると、更に吹き飛んだ。
 の、だが。
「……っ痛ぇ!? 予想してたが、なんて硬さだっ」
 蹴ったWの方がダメージを負っていた。片足を抱え、痛みに悶えることになってしまう。
『翔太郎、奴の弱点は火だ。硬度のこともあるし、ヒートメタルでいこう』
「つつ……了解」
 Wはメモリをヒートとメタルに挿し換えた。
 カーボンの方は攻撃を防ぐことはできたものの、地面に無様に倒れ込んでいた。だがすぐ起き上がって向かってくる。
 Wはメタルシャフトでカーボンを迎え討った。メタルシャフトとカーボン同士がぶつかると、金属がぶつかり合うような音が響き渡る。
 一瞬の膠着は、すぐに崩れた。Wが力を強めると、カーボンは体勢を崩したのだ。
 後ろに倒れようとするカーボンを、Wの炎をまとった足が蹴り飛ばした。僅かな固い感触があったものの、熱に負けたカーボンの肌は瞬時に燃え上がる。
 腹部に火を灯したまま、カーボンはまたも倒れ込んだ。Wは追撃をしようとするが、武器を振り下ろすことは叶わなかった。
 上体だけすぐに起こしたカーボンは、突如悲鳴のようなものを上げたのだ。金属がこすれ合うような甲高い不快な音が、突如のっぺらぼうの顔にぽっかり空いた穴から飛び出したのである。
 いきなり現れた口に驚いてたたらを踏んだWは、その音に硬直した。思わず耳を塞ぎ、その場から動けなくなってしまう。
 それは戦いを見守っていた亜樹子も同様で、耳を塞いでうずくまった。
「な、何、この音……!」
「ぐっ……フィリップ、これもこいつの能力か!?」
『そんなはず……カーボン・ドーパントに、こんな能力、無い……!』
 カーボンは更に、だらりと垂れ下がっていた髪をぐるんと振り回した。空を舞った髪は一瞬でWとの距離を詰めるほど伸び、それ自体が生き物のようにうねって襲いかかる。
 Wは慌てて飛び退いた。コンクリートの地面を、髪が砕く。辺りに破片が飛び散り、Wの視界を覆った。メタルシャフトで打ち払うものの、その時にはカーボンの姿はどこにも見当たらなかった。
「くそっ、逃げやがったか」
 wは思わず悪態をついた。
「うう……あれ、本当にドーパントなの? もうホラー映画の怪物みたいだったよぉ」
 未だに立ち上がれないらしい亜樹子はそんな泣き言を口にした。
「んなわけねーだろうが。おいフィリップ、本当にあんな能力は無いんだな」
『ああ、間違いない。だが、能力以上の力を引き出す者もいる。あのドーパントもその可能性はあるだろう』
「けどよ、あんな超音波出すなんて炭素に関係あるか? ……ああいや、待てよ。炭素そのものじゃなくて、硬化した炭素って考えれば……」
『翔太郎?』
「フィリップ、体内で硬化した炭素同士をすりあわせて、あんな音を出すことは可能か?」
『……なるほど。確かに固く変化させた体内を動かして、超音波に近い効果を生み出すことは可能だろう。ガラスや黒板をひっかいた音が不快なのと、理屈は一緒だね』
 相棒は納得しつつ、しかし、と続けた。
『厄介だな。戦闘力は大したことはないが、ほかにも隠し球を持っているかもしれない』
「だな。ヒートメモリが効く分まだ戦いようがあるが……とりあえず警戒しとく」
『こちらも検索を急ごう』
「頼んだ。無理すんなよ」
 Wの変身を解いた翔太郎は、ひとつため息をついた。
「亜樹子、行くぞ。……立てるか?」
「こ、腰抜けちゃった……」
「ったく……」
 やれやれと首を振り、翔太郎は亜樹子を背負って歩き出した。
 ハードボイルダーのところに着く頃には、亜樹子も回復しているだろう。
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