花炎異聞録

□第二録 現状確認
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「……つまり、ここは俺がいた時代、世界じゃないってことなのか?」
 七花と名乗った男は困ったように眉根を寄せた。


 ツナの部屋である。あれから七花を連れて、ツナ達は沢田宅に帰った。
 獄寺と山本もいる。都合のいいことにランボとイーピンはいなかったが。
 しかし普段ならツナ達三人がいてもそれなりに余裕がある自室が、七花という大男がいるせいで酷く窮屈に見えた。
 おまけに豪奢な厚着着物のせいで、よけい大きく感じる。
 まぁそれは棚上げにするとして。
 ツナは『過去の異世界の住民』たる七花をじっと見つめた。
 もしくは、『パラレルワールドの過去の住民』を。


 いきなりファミリーになれと言われて困惑する七花に、リボーンは様々な質問を投げかけた。
 その質問は七花がどこから来たのかおおよその見当はついてるというものだったが――ツナにはそれに気付かない。
 が、家庭教師が出した結論は、ツナ達を納得させるものだった。
 つまり、鑢七花は過去――おそらく江戸時代の人間であろう、と。
 あの短いやりとりでそこまでの結論に至るとはさすがだが、なるほど、彼の言う通りそんな気がする。
 時代錯誤の格好もさることながら、言葉にも現代とずれがある。七花がここはどこだ? と戸惑っていたことも踏まえて、彼が過去の人間であることに違いなかった。
 だが。
 七花の言葉で今度はツナ達が困惑することになる。

「江戸時代? 何で江戸が年号になってんだ?」

 …………。
 そこから更に質問を重ねた結果、七花がいた時代――歴史は、ツナ達が知るものとは別物であることが明らかになった。
 まず年号、というか支配している将軍家と都の場所だ。
 尾張である。尾張に都があるのである。
 そして将軍家の名前は家鳴家。徳川のとの字も無かった。
 それから、各地に存在する建物などの名前もツナ達には聞いたことが無い。
 因幡の下酷城だとか出雲の三途神社だとか薩摩の濁音港だとか蝦夷の踊山だとか土佐の清涼院護剣寺だとか江戸の不要湖だとか出羽の天童将棋村だとか奥州の百刑場だとか尾張の尾張城だとか、地名はともかくめちゃくちゃである。
 睦月如月――というのは当時の月の呼称であり、地名も同じくだ。なのになぜその他もろもろが違うのだろう。
 そこでリボーンの結論である。

「七花は、パラレルワールドの過去の人間じゃねえか?」

 大きく違う歴史を歩んだ世界の存在だろうと、そう考えたわけだ。
 無論、カタカナなんて無い時代の七花は「ぱられるわーるど?」と首を傾げていたが、その点はリボーンが補完した。
 そして冒頭に至るのである。




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