花炎異聞録
□第三録 実力試し
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並盛から少し外れた場所に位置する山に、リボーンやツナ、獄寺は訪れていた。
そして彼らの前には、それぞれ向かい合い、構える山本と七花がいた。
山本は両手で時雨金時を持ち、中段に構えている。
一方無手の七花は、左足を前に右足を後ろに引いて、右手を上に左手を下に平手で壁を作るような構えを取った。
虚刀流一の構え、『鈴蘭』――と言うらしい。
獄寺が七花のボンゴレ入りに反対した。
七花が遅いと指摘した通り今になってとツナも思ったが、獄寺が言うには七花の話に聞き入っていたらしい。
ともかく、得体の知れない輩に十代目が守れるかっ、というのが獄寺の主張だった。
それに対し七花は実力には自信があるとはっきり言った。
ツナ達は知らぬことだが、七花は際物達との死闘をくぐり抜けてきたのである。侮られるのはいい気分ではなかった。
「だったら証明してもらおうか」
獄寺は明らかに年上である七花に、嘲るような口調で言った。
さすが年上の野郎は全員敵と言うだけあって、七花も例外ではなかった。
「証明? 何だよ、戦えってことか?」
一方七花も望むところ――とまではいかないが、受けて立つという姿勢を取った。
しかしである。
「待て、獄寺」
リボーンの仲裁により、睨み合い(獄寺の一方的なものだが)は中止された。
「おめーの言葉はもっともだが、今日は日が悪い。もう夕方だからな」
「リボーンさん……」
「明日は休みだし、明日七花の実力を確かめればいい」
ただし、とリボーンは山本を振り返った。
「七花と戦うのは山本だ」
「ん? 俺?」
「な! 何でっ」
目を瞬く山本に対し、獄寺は愕然とした声を上げた。
「獄寺の武器は、七花のいた時代には無いものだ。勝敗はともかく、そのせいで実力が解らなかったら本末転倒だろ。だったら、刀を使う山本と戦った方が解りやすい」
「ですが……」
「……あのさ」
急に七花が口をはさんだ。
先程までののんきさはどこにも無い。
戦う者の厳しさと、強者の余裕がはっきり感じ取れるような声音だった。
「戦う相手はそっちで決めればいいよ。それに関しては文句言える立場じゃないし。でも、そいつが刀を扱う以上、そいつに勝ち目は無いぜ」
「……どういうことだ?」
「そのままの意味だ。刀相手なら俺は負けない自信がある。虚刀流は、刀を持つ相手に対する無刀の剣法なんだから」
拳法でなく剣法。そう言った。
無刀なのに、剣法? わけが解らない。
だが、その言いぐさには絶対の自信があった。
「……おもしれーじゃねーか」
だが、山本にも父より受け継いだ時雨蒼燕流に対して誇りを持っている。
こんなことを言われて、何も思わないわけがない。
「小僧、俺もこの人と戦いたくなった。獄寺には悪ぃが、俺がやるぜ」
そんな形で――
虚刀流七代目当主、鑢七花と、時雨蒼燕流九代目継承者、山本武の対決が決まったのである。
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