花炎異聞録

□第六録 二人の頭領
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「えぇ! クロームがいなくなった!?」
 ツナはベンチから立ち上がった。
 並中の通学路にある公園。そこに、ツナ、獄寺、山本、そしてリボーンと七花が集まっていた。
 リボーンからクロームがいなくなったと聞き、ツナ達は驚きを隠せない。
「城島や柿本すらどこに行ったか解らないとなると、心配ですね」
 獄寺の言葉に、ツナは小さく頷いて再びベンチに腰を下ろす。
「もしかしたら十日前に七花を襲った真庭忍軍が関係してるかもしれねぇ。そこでだ、七花」
 肩に乗ったリボーンに名指しされ、七花はん? と首を傾げた。
「何だ?」
「参考までに、真庭忍軍の戦い方を教えてくれるか?」
「まにわにのことをか?」
「……その言い方だと随分間抜けに聞こえるが、まぁいい。おまえの知る真庭忍軍と同じかどうかは解らないが、戦略を立てる材料になるだろう」
「ん〜」
 七花の眉間にしわがよった。
「えっと……確かまにわに、真庭忍軍は集団行動をしないしのびなんだ」
「集団行動をしない?」
「あぁ。する必要が無いって聞いた。忍法一つ一つが強力だからって」
 そして七花は真庭忍軍の忍法の説明し出す。
 あり得ない、忍法を。
「まず真庭蝙蝠って奴の忍法なんだけど……確か骨肉細工、だったかな?」
「どういう忍法なんだ?」
「一言で言うと、姿を変える忍法だ。変化の術とかそういうのじゃなくて、自分の身体を粘土みたいに形を変えるんだ。実際俺の目の前で俺に成ったし」
「……狸とか狐の妖術みたいなのじゃなくてか?」
「うん。髪の色や長さも変えられてさ、内蔵とかも全く一緒――らしい。そこは本人に聞いたんじゃないけど」
 ――あいにくツナ達には全く伝わらなかった。
 ただ、リボーンだけが何となく察する。
 結果、あまり見たくない忍法だなという結論に至った。
「次は?」
「次は……真庭喰鮫って奴。そいつの忍法は……えっと確か、渦刀。腕に巻いた鎖に繋いだ刀を振り回して攻撃するんだ。……それを逆手に取られて瞬殺されたけど」
「……次」
「あ、うん。えっと次は真庭狂犬。こいつは、他人の身体を乗っ取る忍法を使った。狂犬発動って言ったかな。ただ、狂犬自身が女だから女しか乗っ取れない……らしい」
「次は」
「真庭川獺。こいつは物の記憶をたどることができたらしい。記録辿りって言ったかな」
 七花はそこであ、と声を上げた。
「誰かのかは解らないけど、忍法足軽って忍術もあった。自分や物質の体重を無くす技だ」
「……渦刀ってのはともかく、他はもはや妖術じゃねーか」
 さすがのリボーンも頭が痛くなってきた。
「あと……」
「まだあるんですか!?」
 ツナがすっとんきょうな声を上げた。
「いや、あと一つ。真庭鳳凰って奴の忍法で、命結び」
「命、結び……?」
「……相手を殺して、その身体の一部と能力を自分のものにする忍法だそうだ」
「……」
「実際鳳凰は自分の腕を自分で切り捨てた後、別の奴の腕を引っ付けてた」
「……」
 最後にとんでもない忍法が来た。いや、最初からとんでもなかったけど。
「……それをもし――本当に奴らが真庭忍軍だとして、そんな忍法使ってくるとやっかいだな」
 リボーンが七花の肩の上で考え込んだ。
「……まにわにの奴らは、忍者は卑怯卑劣が売りだっていってた」
「となると正攻法でこないな」
 獄寺は眉間にいつもよりしわを寄せた。
「……それにも、そんな奴らとよく知り合えたよな、七花さん」
 山本の言葉に七花は苦く笑った。
「色々合ってな」
 その笑みに虚を突かれ、ツナ達は言葉を失う。
 七花のその表情の理由をツナ達が知るのは、もう少し先になることになる。
 とは言え、それはそう遠く無い未来であった。




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