花炎異聞録

□第十録 選択
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「俺は本気で来いと言った。しかし貴様らは――どうやら本気を出せないようだな」
 ボンゴレI世(プリーモ)――ジョットは言った。
 ぼろぼろで立つことも苦しそうな、桔梗とザクロを前にして。
 決着は早々に着いた。
 死ぬ気の炎による攻撃をジョットは零地点突破により吸収し、無効化したのだ。
 逆に二人はジョットの炎を避けることができず、現状に至っている。
「見たところマーレリングを持ってはいるようだが……それの真価を、今は発揮できないということか?」
「……ハハン、まぁそういうことですね」
 桔梗は苦しげに笑った。それだけでも体力を消耗するようで、頬に汗が伝っている。
「ザクロ、ここはいったん退きましょう。リング無しでもボンゴレ歴代最強、その名は伊達ではないようです」
「伊達でもなけれは無論酔狂でもない。ここはとどめを刺すべきだろうがあいにく非情になれなくてな、見逃してやる」
 ジョットの言いようにザクロは突っかかろうとしたのか身を乗り出すが、桔梗に制止をかけられた。
「やめなさい、ザクロ。……悔しいですが、我々はここで死ぬわけにはいきません」
「チッ……しゃあねぇ」
 ザクロは顔を歪めて舌打ちした。
 そして二人して、その場を去っていく。
 ジョットはその後ろ姿が消えるまで見送った後、背後に声をかけた。
「いつまで隠れてるつもりだ?」
「……なぁんだ、ばれてたの」
 木の陰から姿を現した金髪碧眼の女――もとい否定姫は、悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「ばれてるに決まってる。奴らも気付いていたようだから、そちらに危害がいかないようにするのが大変だったぞ」
「あら、それはごめんなさいね」
 否定姫はからから笑い、そしてすぐその笑みを消した。
「んで。貴方、あいつらが何者か知ってるみたいだけど?」
「……詳しくは言えない。第一知ってると言うほどでもない。それより否定姫」
「……何かしら?」
「完成形変体刀――及び、その所有者という者達のこと、教えてくれないだろうか」

 この後、ジョットは知る。完成形変体刀とはいかなるものなのか。
 そして、ジョットはまだ知らない。完成形変体刀には己に深く関係があるものがあることに。
 このことを彼が知るのは、物語が更に進展したのちである。




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