書庫V

□きっと明日は
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 初めて会った時の印象は面白い男の子だった。
 内面なんて、見れてなかった。


 京子は一人、放課後教室に残っていた。
 日直の仕事で遅くまで残っていたのだ。
 一緒に残ろうかと親友の黒川花は言ってくれたが、断っている。
「んー! 終わったーっ」
 日誌を書き終え、ぐぐぅっ、と伸びをする。日はもう傾き、空は茜色に染まっていた。
「もうこんな時間……」
 時計を見、目を瞬く。花に帰ってもらったのは正解だったかもしれない。
 急いで鞄に荷物を詰め込み、教室を出ようとする。が、その前に誰かが教室を開けた。
「えーと……って、京子ちゃん!?」
「あ、ツナ君」
 現れたのは同じクラスの少年――ツナこと沢田綱吉だった。
「え、京子ちゃん何で……」
「あ、私今日日直だったんだよ」
 そう言うと、ツナは頬を赤くしつつへぇと返事をした。
「ところで、ツナ君はどうしてここに?」
「あ、そうだっ」
 思い出したようにツナは自分の机に近付き、ノートを一冊引き抜いた。
 ノートには名前しか書かれていないため、どの科目のものかは判然としない。
「はぁ〜……リボーンに殺されるとこだった……」
 心底安堵した様子のツナに、京子は首を傾げた。
リボーンとはツナの家にいる、スーツ姿の赤ん坊である。
 ノートを忘れただけでなぜ彼に殺されるんだろう。何かの遊びだろうか、と京子は首を傾げた。
 天然な京子はまさかその赤ん坊が凄腕の殺し屋とは思っておらず、遊びの暗号か何かかと認識した。
「あ、そういえば京子ちゃん、今帰り?」
「うん」
 京子が頷くと、ツナは口の中でごにょごにょと何かを呟いた後、意を決したような顔を上げた。
「だったらさ、その……一緒に帰らない?」
「……え」
 京子はきょとんとした。まさかそんなことを言われるとは思っても見なかったのだ。
「あ、いっ、嫌ならいいんだ!」
「え、あ、違うの! あの、じゃあ……一緒に帰ろっか」
 言えば、ツナは幸せに満ちた笑みを浮かべた。




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