書庫V
□居場所
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ツナはため息をついた。
クラスメイトからはダメツナと呼ばれている彼は、たいがいの難には慣れている。最近では、もはや彼一人では収集不可能の事態が周りで起こっているのだから。
しかし、慣れているからと言って、何も思わないわけではない。
「何でみんな俺に仕事押し付けるかなぁ……」
クラスメイトに押し付けられた掃除をこなしながら、ツナは力無くぼやいた。
帰ろうとした時、クラスメイトに裏庭掃除の道具を持たされたのだ。
獄寺も山本もたまたまいなかったため、断りきれずに今に至っている。というより、断る前にクラスメイトは帰ってしまった。
たった一人で秋の裏庭を掃除するのはとても寂しい。何せここは、人通りが全く無いのだ。
ツナが二度目のため息をついた時、かさり、と落葉を踏む音がした。
振り向くとそこには、見覚えある学ランの少年が。
「ひ、ひひひ雲雀さん!」
「やぁ」
驚きのあまりどもるツナに対し、雲雀は今気付いたという顔であっさりした返事をした。
「な、何でここに……?」
「ここは僕の学校だよ。自分の私有地をウロウロしちゃいけない?」
雲雀はむ、と不機嫌そうに顔をしかめた。
学校を私有地って言う!? と一瞬思ったツナだったが、雲雀に睨まれ、首をぶんぶん横に振った。
すると、雲雀は苛立ちが消えたのか、無表情に戻る。
そんな彼を見て、ツナはふと、思ったことを口にした。
「雲雀さんは、何で並中が大切なんですか?」
ツナの質問に、雲雀は目を瞬く。かなり珍しい表情であり、なぜそんなことを聞くのか、と言いたげな顔だった。
ツナはそんな顔を見て、何でこんなこと訊いてしまったんだろうと少し後悔する。
しかし数秒の沈黙の後、意外にも返答がきた。
「ここは、僕の居場所だから」
「雲雀さんの?」
「あぁ」
顎を引く雲雀。
「ここは僕にとっているべき場所なんだ。だから、それを汚したり傷付けたりする奴は噛み殺す」
途中まではいい話っぽかったのに、最後は何やら物騒な終わり方だった。
「君は? 君の居場所はどこなの?」
「えっ……」
今度はツナが目を瞬く番だった。
まさか、雲雀がこんな質問をするとは思わなかったのだ。
「俺の居場所ですか……?」
「うん」
じぃっ、と、雲雀はこちらを見つめてきた。多少の幼さは感じられるものの、元より鋭い目付きであるため、睨まれているようにも思える。
内心の恐怖を抑えつつ、ツナはためらいがちに口を開いた。
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