異世界の守り人
□トラペッタ
1ページ/3ページ
トラペッタは石壁に覆われた街だった。恐らく空を飛ぶ魔物対策だろう、随分高い壁だ。
何となくベクセリアを思い出しながら、アリィシアは辺りを見渡した。
と。視界に煙が入ってくる。たき火か何かでもやっているんだろうかと思いながらも、足を進めた。
「アリィシア、どうしたの? 置いてくよ」
「え?」
意識を現実に戻すと、どうやらゆっくり歩いていたらしい。エイトとヤンガスが思ったより前にいた。
「悪い、煙見てた」
「煙? あぁ、あれでげすか」
ヤンガスがアリィシアの見ていた煙に目をやった。
結局あの後、さんざんトロデと言い争った山賊ヤンガスは、旅の同行者になっていた。
山賊は旅に同行する条件として足を洗い、旅の事情を話して現在に至る。
橋から落ちかけた際に落としたらしい斧に代わり、今は棍棒を装備していた。
「何なんでしょうかねぇ。火事でも起こったんでがしょうか」
「でも、だったらもっと騒がしくない? 煙が立ってるってことは、火がまだついてるってことでしょ?」
エイトの言葉に、アリィシアも同意した。
「確かにな。しかしその割には誰も火消しに走っては……む?」
アリィシアの視界に、慌てたように早足で歩く二人の男の姿がかすめた。
様子からしてどうやら消火活動をしているわけではないようだが、一体どうしたんだろう。
(ま、私には関係無いだろう)
アリィシアはそう思い、エイトとヤンガスと共に酒場へと足を向けた。
.