異世界の守り人
□幕間「バルガとの出会い」
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「はぁ? 友達?」
僧侶――バルガは眉をひそめた。
セントシュタイン城下町の宿屋。ここを拠点にしている彼が帰ってみると、宿屋の主人は代わり(リッカという、真面目そうな女の子だった)、その友達が黒騎士退治に名乗りを上げたという話を聞かされたのである。
もっとも名乗りを上げたのはついさっきで、今は対黒騎士戦に向けて買い物に出ているらしいが。
「いや、一人じゃ無理だろ。この国の兵が束んなってかなわなかった相手だぜ。つかそいつ、歳幾つ? 職業何よ?」
「確か十六じゃないかしら。職業は……多分旅芸人?」
「何故疑問系」
「本人が言ったんじゃないからよ。リッカがそう言うと微妙な顔してたし」
酒場の店主、ルイーダは肩をすくめた。動作一つ一つに色気のある、大人の女性である。
「しっかりしてそうなんだけど、どっか危なっかしくてね。私を助けた時も、大きい魔物に一人で向かっていったし」
しかも倒すし、とルイーダは嘆息する。
倒してんじゃねぇか、とバルガは内心ツッコみつつ、その旅芸人の姿を想像する。
大きな魔物を倒すなら、やはり相当の手練れだろう。むきむきだったら嫌だなぁ、などと思いながら、で? とルイーダを睨み付けた。
「俺にそいつの仲間になってやれって?」
「そう!」
「断る!」
即断即決。バルガの信条だった。
「何で?」
「何でじゃねぇよ。ルイーダさん、俺そんなむきむき旅芸人と旅したくねぇよ。だいたい男二人旅ってむさくるしいわ」
「……バルガ君、君勘違いしてるわ」
なぜかルイーダは、とても楽しそうに笑った。
「その娘はね――」
「ルイーダさん、リッカは?」
背後からの唐突な声に、バルガは思わず鉄の槍を構えかけた。
寸でで思いとどまり、誰だと顔をしかめながら振り返る。
とたん、紅い宝石とかち合った。
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