異世界の守り人

□占い師と魔術師
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 水晶玉を受け取ろうとしたユリマは、その体勢のまま固まった。
 二階で眠っていたはずのルイネロが降りてきて、水晶玉をよこせと言ってきたからである。
「その水晶玉をすぐによこすんだ。また捨ててきてやる!」
「お父さん、どうして!? これでまた、ちゃんとした占いができるのに……」
「黙れ! すぐによこすんだっ」
「ちょっと待ってください。あまりにも横暴じゃありませんか?」
 さっきまで呆然と立ち尽くしていたエイトが、静かに間に割って入った。
「そこまでかたくなになる理由を教えてください。でないとユリマさんは勿論、僕らも納得できない」
「エイトさん……」
 ユリマが不安そうにエイトを見上げた。
「私もエイトに同感だ。納得できる理由を求める」
 アリィシアはエイトの隣に立ってルイネロを睨み付けた。
「一体、貴方は何にこだわっているんだ?」
「それは……」
「……二人共。待ってください」
 と。ユリマがアリィシアとエイトを止めた。二人の間を抜け、ルイネロの前に立つ。
「お父さん……私、知ってるんだよ。お父さんが占いを止めた理由。私の、本当の両親のことだよね」
「……!」
「お父さんが、私の本当のお父さんじゃないことはずっと前から知ってた。お父さんの占いで、逃げてた二人を見つけたことも……」
「……」
 ルイネロは黙って天井をあおいだ。やがて、ゆっくり口を開く。
「当時のわしはおごっていた。わしの占いで占えないものはないと……だがそれが、おまえの両親を追い詰め、結果――」
 先を続けることはできなかったらしい。ルイネロはかぶりを振った。
「だからわしはおまえを引き取り、占うことを止めたのだ」
「……それは、貴方の咎ではないだろう」
 アリィシアはルイネロを見つめた。
「貴方はただ仕事をこなしただけだ。貴方の責任ではない。……咎というのは、自ら手をくだした時言うんだ」
「アリィシアさんの言う通りよ、お父さん」
 ユリマはルイネロの手を取った。
「私、お父さんが占ってるところ見たいな。占ってる時のお父さん、きっと輝いていたはずだから」
「ユリマ……」
 ルイネロは言葉を詰まらせた後、頷いた。
「……そうだな。どうやらわしは、過去に捕らわれ過ぎたようだ」
「じゃあ!」
「あぁ。また占いを始める。今度は、大勢の人間を救うためにな」
 そう言ったルイネロの目は、ユリマの言う通り輝いていた。




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