異世界の守り人
□出会い
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今日はもう遅いし宿をとろうということで、アリィシア達はマイエラ修道院の近くにあるドニの町までやってきた。
修道院には宿泊施設が無いため、巡礼者は皆そこの宿で泊まるようだ。
日が沈んだ空を宿の窓越しに眺め、アリィシアはヤンガスの説明を思い出した。
と。
「ねぇアリィシア。ヤンガスが酒場に行こうって言ってるんだけど」
同室になったゼシカが顔を覗かせた。
「酒場?」
「うん。情報収集が目的だってエイトには言ってたけど……」
「メインは酒だな」
アリィシアがにやりと笑うと、ゼシカはでしょうね、と笑い返す。
「だから私達も行きましょ。見張りよ。エイトだけじゃ心もと無いし、酒場ってちょっと興味あるしね」
「なんだ。ゼシカは今まで言ったことが無いのか?」
アリィシアは首を傾げた。
「ポルトリングにあったろう。酒場」
「そうなんだけど。でもその時は行く余裕無かったから」
そういえば、今思い返してみると確かにそうだ。魔物騒ぎやら何やらで、酒場を覗くことすら無かった気がする。
そういう意味では、アリィシアは暇だったが。特に武具をそろえる必要も無かったし。
「うん。じゃあ私達も行こうか」
言いながら帯剣するアリィシアに、今度はゼシカが首を傾げる番だった。
「何で剣を付ける必要があるの?」
「酔っ払い対策。さすがに抜きはしないが、持ってるだけで効果はあるだろ」
「なるほどねー。じゃ、私も持っていこうっと」
そう言ってゼシカは、ベッドの脇に置かれた鞭を手に取った。
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