異世界の守り人

□旅、再開
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 エイトはノックの音に目を覚ました。
 ぼんやりする頭を振りながら起き上がると扉が開き、ククールが入ってくる。
「……ククール、さん」
「起きたか」
 ククールは酷く静かな声で言った。
「眠れたか?」
「……一応は」
「あー……」
 ククールの顔がしかめられた。
「……その、なんだ。院長のことは、あんたらのせいじゃない。それだけは俺が保証する。悪いのは、あの道化師だ」
「……」
「それとさ。団長が、あんたらに話があるんだと。旅支度したら来てくれ。じゃ、俺は確かに伝えたからな」
 ククールは念押しすると、そのまま出ていってしまった。
 エイトはしばらく黙り込んでいたが、やがてベッドから起き、ブーツをはいた。
「……マルチェロさん、何の話だろうな」
「! ……アリィシア、起きてたの?」
 エイトは振り返ると、アリィシアはベッドに腰かけていた。すでに手袋をはめ、ブーツもはいており、ちょうど髪を結っているところのようである。
「さぁ……やっぱり、僕らのこと色々訊いてくるんだろうね」
「その辺は王がしていると思うがな。私はそれより、騎士団はどう動くか気になる」
 髪を結い終えたアリィシアは、帽子を深くかぶった。
「彼らとて、黙っているわけにはいかないだろう」
「あっしも姉御に同意でげす」
 ヤンガスがむくりと起き上がった。ゼシカも、すっきりしない顔で身体を起こしている。
「奴らにとっても、ドルマゲスはにっくき敵なんでがすから」
「……私なんて、悔しくて眠れなかったわ」
 ゼシカがぐ、と拳を握り締めた。
「結局あの時、ほんの僅かにでもあいつに攻撃できたのはアリィシアだけだった。私も、メラの一つぐらい撃ち込めばよかった……」
「けど、倒すことはできなかった。悔しいのは皆同じだ」
 アリィシアは立ち上がった。
「とりあえず、団長殿に会いに行くか」
 アリィシアは剣を帯びた。その瞳には、すでに強い光が取り戻されている。
「そうだね。話はそれからだ」
 エイトは頷き、バンダナを頭に巻いて鉄の槍を背負った。鱗の鎧は、旧修道院での戦いですでに使い物にならなくなったため、捨ててしまった。修道院を出た後、新たに鎧を新調せねばならないだろう。
 修道院を出た後――出発した後、僕らはどこに行けばいいんだろう?
 エイトは唇を噛む。ここから出ても、もうドルマゲスにたどりつくための手がかりは無いのだ。
 やっと掴んだと思ったのに、刃が届くところにいたのに――!
「……」
 エイトはかぶりを振り、荷物の入った鞄を手に取った。




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