異世界の守り人

□月夜の下、教会にて
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「はぁっ」
 気合いの声と共に、エイトの槍が唸りを上げて魔物を突き刺した。
 幹に人の顔を貼り付けたような姿の樹は、喉を貫かれてもがく。槍を抜くと、びくんと身体をけいれんさせてしおれた。
 エイトが辺りを見渡すと、視界の端で長い銀髪が揺らめいた。
 彼は低い姿勢で走り出し、レイピアを突き出す。
 緑色のスライムに乗った騎士はそれを受け止めようとするも一歩遅く、剣先が鎧の隙間を突いた。
 落馬する騎士を一瞥し、彼――ククールはこちらを振り返った。
「そっちどうだ?」
「問題無い」
 答えたのはエイトではなく、アリィシアだ。
 彼女はヤンガス、ゼシカと共に鉄の身体を持つ白い鳥と青い羊の下半身を持つ半人半獣の魔物を相手取っていたが、どうやら全て倒したようだ。すでに三人共、それぞれの武器を納め始めている。
「びっくりしたわねー。まさか食事中に襲われるなんて思ってもなかったわ」
 するすると鞭を回収しながらゼシカはため息をついた。
「昼飯のうまそうな匂いにつられたんでげすかねぇ」
「いやヤンガス、からくりいるから」
 太った腹をさするヤンガスに、アリィシアがツッコミを入れる。そしてある一点の方を見た。
「それより昼食、焦げてないかな」
「あ゛」
 エイトは身体を強ばらせ、火にかけられた鍋に走り寄った。
 石で丸く囲われた焚き火の上に置かれた鍋の中身は、先程と変わらない乳白色をしている。エイトはほっと安堵のため息をつき、鍋をかきまぜながら仲間を振り返った。
「大丈夫! 食べれるよっ」
 仲間達は緩んだ顔でこちらに向かった。
「つぅか、意外だな」
 この面々の中では一番新参者のククールが、感心したような顔でエイトを見つめた。
「あんたがこの中で、一番料理がうまいなんて」
「エイトは、子供の頃は 小間使いをやっておったからのぉ」
 料理も戦闘も一切手伝わなかったトロデがしみじみと言った。
 ちなみにこの面々で次に料理が得意なのは、一人旅をしていたアリィシアと、意外に器用なククールである。
 ヤンガスは男の料理とか言って大ざっぱな調理法をするため味が無駄に濃いし、ゼシカに至っては包丁を持ったことすらない。
 短剣を使えるのになぜ、と思わなくもないが。
 しかし、ゼシカはエイトから料理のことを教えられているため、その内上達するだろう。
「やれやれ、魔物のせいで遅めの昼食になってしまったな」
 アリィシアの呟きは、全員の心を代弁した者だった。




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