異世界の守り人
□喪色の王
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城から垂れる黒の垂れ幕、黒い兵士服を着た二人の衛兵、黒く染められた家の屋根、そして喪服を着た国民達――
アスカンタは、城下町全体が喪に服していた。 色付きの服を着たエイト達は、町の入口で足を止め、固まってしまう。
「……何、これ」
ゼシカがよろめいた。顔は青ざめており、呆然と町を見渡している。
「国全体が、葬式でもやってるのか?」
アリィシアは帽子をかぶり直した。その目は、いぶかしげな色を含んでいる。
「国王でも死んだのだろうか」
「だったら、いくら何でもマイエラまで話が来るぜ」
ククールが顔をしかめた。
「ここの国王の葬式では、マイエラの院長が呼ばれるんだからな……」
「じゃあお妃さん辺りでげすかね〜」
ヤンガスが居心地悪そうに言った。
彼の発言は事実を突いたものだったが、現在のエイト達はそれに気付かない。
……当たり前だが。
「……とりあえず二手に別れて情報収集しようか。陛下にご報告しなければならないし」
「それじゃ、俺はハニーと――」
「絶対嫌」
肩に手を回そうとしたククールをかわし、ゼシカはアリィシアの後ろに移動した。
「……ゼシカは私と行くか?」
アリィシアが苦笑すると、ゼシカはこくこく頷いた。
「あっしは姉御やゼシカのねぇちゃんと行くでがす。姉御に限ってとは思いやすが、女二人で歩き回るのはまずいでげすよ」
「解った。じゃ、僕はククールと行くよ。いい? ククール」
「しゃぁねぇな」
ククールは肩をすくめた。ゼシカに拒絶されたことは、それほどこたえていないようである。
「そうだな……三十分後ぐらいにまたここで落ち合おうか」
エイトが言うと、全員頷いた。
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