異世界の守り人

□疑問
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 エイトはアリィシアが女性らしい服装をしていることに少し驚いた。
 無論あの青衣も女性用のようだが、普段の彼女の言動やデザインのせいで男装に見えてしまうのだ。
 男装の麗人、という言葉が頭をよぎる。
「? どうした」
「あ、えーと……それ寝間着?」
「あぁ」
 アリィシアは少しだけ眉をひそめた。なぜか不機嫌そうである。
 エイトはその様子に首をひねりつつも、彼女を見据えた。
「訊きたいことがある」
「何だ?」
「……君は一体どこから来たんだ?」
 ゆっくりと、しかしまっすぐに質問すると、アリィシアはきょとんとしたように目を丸くした。
「何だ、やぶからぼうに」
「君を疑ってるわけじゃないんだ。ただ、僕を助けた時のタイミングのよさや剣術――ちょっとでき過ぎじゃないか? まるではかったように君の存在が旅に参加した。僕一人じゃドルマゲスを相手にするのはきついと思ってた矢先だったし――何だか――」

「何かに導かれるように?」

 アリィシアの唐突な言葉に、エイトは押し黙った。
 何かに導かれるように。そう、エイトが思ったのは、まさにそれだ。
 言葉を見失ったエイトに、アリィシアは淡い微笑を浮かべる。
「長い間旅をしているとな――そう思えるような場面に遭遇するんだ。まさに導かれるようにな。エイト、おまえと私の出会いも、多分そのたぐいだと思う。だから私の存在を疑わしく思うのも無理無い」
「っ……違う、僕は」
「解ってる。疑惑ではなく疑問なんだろう? ……けど、悪い。その質問に対する答えは先延ばしにさせてくれないか?」
「どうして?」
「……私自身、この状況を判じかねてるんだ」
 アリィシアはうつむいた。
「神のお導きではあるんだと思う。でなければ、説明が付かないところがあるし。けれど、そう思うのは絶対じゃないからな。だから」
「解った」
「……え?」
 頷くと、アリィシアは驚いたように顔を上げた。
「アリィシアが言いたくなるまで待つよ」
「エイト……」
「信じてるから」
 エイトはそう言って踵を返した。
「お休み。明日早いから、早く寝てね」
 笑いかけると、アリィシアは何か言いたそうな顔をしたものの、やがて微笑した。
「お休み」




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