異世界の守り人
□塔と像
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「何であっしらがこんなことしなけりゃならないんでがすかねぇ」
ヤンガスは、目の前の少年の背を追いながら顔をしかめた。
「だいたいあっしらにそのゼシカって嬢ちゃんを追う理由が無いでがす。ほっときゃいいんでがすよ」
「そうもいかないさ」
アリィシアは走りながら肩をすくめた。
「もし――私達の予想通り、サーベルトって人がドルマゲスに殺されたなら、彼女の目的は私達と同じだ。逆に放っておく理由が無い」
「アリィシアの言う通り。もしたった一人でドルマゲスを追ったりしたら……危険極まり無いよ」
エイトは厳しい表情で顔を上げた。目線の先を追えば、目的地である高い塔が見える。
「だから、せめて彼女を説得するなりしないと。もし彼女がドルマゲスと会ったら、最悪の事態になりかねない」
最悪の事態。彼の言う最悪の事態とは、いかようなものだろうか。
マスター・ライラスに殺されることか。
あるいは呪いのいばらに捕まることか。
どちらにしても、確かに最悪しかない。
最悪と最悪の二択。それを選ぶ前に、何とかせねばならないのだ。
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