花炎異聞録
□第三録 実力試し
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その日、七花はツナの家に泊まった。
リボーンの知り合いと言うと、ツナの母、奈々はあっさり受け入れたのである。
さすがリボーンやランボを受け入れただけある。この包容力には七花も驚いていた。
「自分でいうのもあれだけどさ、普通俺みたいな得体の知れない奴受け入れるか?」
もっともな感想だった。
そして現在。七花は山本と向かい合っていた。
「だ、大丈夫かな、七花さん……」
リボーンが見込むだけあって実力はあるのだろうが、やはり不安なツナである。
山本の実力をしっかり知っているだけに、怪我をしないか心配なのだ。
無論、山本はリングを使わないと決めていたし、手加減もするだろうけど。
七花の実力は、まぁ山本より下かなと思う。七花がどんな戦いをするかは知らないが、多くの激戦を繰り広げてきた山本には敵わないだろうから。
獄寺も同じことを考えているのか、結果は目に見えてるな、と呟いたりしていた。
「二人共、準備はいいな」
リボーンの言葉に、山本と七花は短くおう、と答える。
「んじゃ……始め!」
リボーンの声に、先に動いたのは山本だ。
ただ、走り出したのではなく、かといって刀を振り上げたのでも無い。
刀を、落としたのだ。
手を滑らせたのではない。
時雨蒼燕流の技の発動だ。
時雨蒼燕流、攻式三の型――
――遣らずの雨。
山本の足先が、刀の柄の石突きを捉えた。
とたん、矢のように刀は七花へと放たれる。
斬るのでなく、突くでなく、貫く。
それこそ、矢のように!
「……」
しかし七花は、その瞠目するべき技に対し、冷静に対処した。
構えた右手で、刀を弾いたのである。
無手にも関わらず、素手にも関わらず、避けること無く弾いたのだ。
これに山本は当然驚いた。
が、すぐさま戦闘に意識を戻し、横に弾き飛ばされた刀を掴む。
元々避けられると思っていた一撃だ。七花の行動は予想外だったものの、すでに動いていたために遅れることは無かった。
すぐさま次の行動に移る。
今度は両手で持ち、七花へと突っ込む。
それと共に七花も走り出している。
むしろ、七花の方が速かった。
「虚刀流――『菫』!」
気付けば振り上げられた七花の右足に、山本は両足を絡められていた。更に、平手で上半身を思いきり突かれる。
当然、山本は後ろに倒された。
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