書庫V

□居場所
2ページ/2ページ




「俺の居場所は……みんながいるところです」
「……みんな?」
「はい」
 ツナは頷いた。
「俺はずっとダメツナって呼ばれてて、友達もいなかったんです。でもリボーンに出会って、俺は変わった」
 リボーンはハチャメチャばかりで、ツナの周りをとんでもない混乱の場に変えてしまった。
 最初はそれに戸惑い、苛立ったりもしたけど、そのおかげで守るべき人達に出会えた。
 かけがえの無い、大切な仲間を。
「リボーンはやることとんでもないけど、そのおかげでたくさんの友達ができたんです。獄寺君や山本、京子ちゃんにハル……その一人一人の傍が、俺の居場所です」
 言い終え、ツナはそっと雲雀の様子を伺った。
 雲雀の黒の瞳に映っていたのは、驚きだった。ただ呆然と、こちらを見つめてる。
「雲雀さん? あの」
「君って……」
 言いかけたツナを、雲雀は遮る。そして一言。
「君って兎みたいだね」
「……え」
「誰かの傍が居場所なんて、寂しいと死ぬ兎みたいじゃないか」
 まさに草食動物だね、と言い残して雲雀は踵を返した。
 呆然と突っ立ってたツナはポソリと呟く。
「……雲雀さんは猫みたいだな」
 どうやら雲雀には聞こえなかったらしい。そのままスタスタと去ってしまう。
 雲雀はツナのことを『兎』みたいだと言った。
 確かに自分は例えるなら兎だろう。
 いつも誰かの傍にいて、一人だととても寂しいから。
 だから、みんなを守りたいと思う。
 そして雲雀は、例えるなら猫。
 群れることなく、ただ自由気ままに生きている。
 猫は主人ではなく家につくと聞いたことがある。雲雀の場合は並中、そして並盛町全部なんだろう。
 だから並中や並盛町を守りたいと思っている。
 そこまで考えて、ツナは気付いた。
 自分と雲雀は、一つだけ共通点がある。
 それは――
「雲雀さんも、守りたいものがあるんだ」
 ツナは再び呟いた。
 形は違えど、ツナも雲雀も守りたいと思うものがある。
 だから戦う。もっとも雲雀は私情も入ってるだろうが、守りたいという気持ちも、理由の一つだろう。
 意外な自分と雲雀の共通点に、ツナは少し笑ってしまう。
 ツナにとって、雲雀はやはり怖い存在だ。しかし、さきほどの僅かな会話で、ツナは雲雀が少しだけ身近に感じられた。
 ツナは雲雀が去っていった方向を見つめる。
 守りたいと思う人の中には、雲雀もいた。雲雀も、ツナにとって『居場所』の一人だから。
「少しは、雲雀さんと仲良くなれるかな?」
 ツナはそっと微笑んだ。


 大切な『居場所』達。
 それを守るために、俺は戦う。
 きっといつか、みんなで笑いあえる日が来ることを信じてるから。



終わり
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ