書庫V
□剣の覚悟
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自分が剣とはどういうことか。
それは剣士とどう違うのか。
スクアーロは『剣』なのか。
自分は『剣』になれるのか。
もし自分が『剣』なら……主は誰だろう。
山本の脳裏に、親友の顔が浮かぶ。
だが彼は親友であり、『主』では無い。
ツナがマフィアのボスであり、自分の『上司』に当たることは解っている。
だが主従という感覚が、山本には無かった。
「なぁ、スクアーロ」
「あ゛ぁ?」
「もし、ザンザスと別の形で出会ってたら……あいつの『剣』にならなかったのか?」
「さぁなぁ」
スクアーロはそっけなく答えた。
「もしもなんて知るか。今にだけ目ぇ向けとけば充分だろうがぁ」
「……そっか」
山本はそれっきり黙ることにした。
山本には解らない。
スクアーロが言う『剣』というのも、その『剣』として生きるというのも。
父なら、解るだろうか。
山本は過去にいる父親のことを思い出した。
しかし彼も、教えてくれない気がする。
彼もまた、自分で考えろというような気がした。
見えているものがあまりにも違い過ぎる。
スクアーロと自分との間には、深い溝がある気がした。
山本は夜空を見上げた。
いつの間に現れたのか、空には三日月が金色に輝いて浮かんでいる。
ふと、友人達がどうしているか気になった。
山本は、仲間と離れて修行している。仲間がどうしているかなど、知るよしも無い。
だがなぜか、仲間は頑張っていると確信することができた。
己ばかり悩んでいては、駄目だろうと思う。
山本は自然と笑っていた。
今は、『剣』だのなんなのと悩んでいる場合じゃない。
山本は月へ手を伸ばした。
仲間と共に過去へ帰る。その意志を、再確認して。
山本は拳をぐっと握り締めた。
決意を新たにするように。
終わり