書庫V
□見抜くその瞳は
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「何してんだ?」
声をかけると、びくりとその細い肩が震えた。
「あ……リ、リボーン」
河川敷に腰かけていたツナは、男にしては大きいその瞳をこちらに向けた。
「おめー、家に帰らずこんなところでぶらぶらしているとは。あとでねっちょり勉強だな」
「な! ご、ごめんっ。だからねっちょりは止めてー!」
腰を浮かせて騒ぐツナに、リボーンは内心少しほっとする。先程までの彼が『沢田 綱吉』でない気がして、少々焦ったのだ。
何でそんな風に感じたのか、リボーン自身も解らない。普段浮かべることの無い哀しく儚げな表情を、ツナが浮かべていたからだろうか。
リボーンはあるか無いかぐらいのため息をついてツナを見上げた。
「ほら、とっとと帰るぞ。遅くなるとママンが心配する」
「あー……うん」
ツナは微妙な顔であいまいな返事をした。まだここから動きたくないらしい。
「何だ。おめーどうかしたのか?」
「うん……ちょっと白蘭のこと、考えてた」
リボーンはおや? と思った。
未来から帰ってきて一週間、ユニのことはよく思い出し、助けられたんじゃないかと哀しそうに呟くことは多々あったが、白蘭のことはあまり口にはしなかった。
あえて避けていた、という方が妥当かもしれない。ツナにとって彼は許せない敵だったのだから。
しかし今は、自分から白蘭の名を口にしている。どういう心境の変化だ、とリボーンはいささか身構えた。
無論、ツナに気取られないよう表面はいつも通りだが。
「白蘭がどうかしたのか?」
問うと、ツナはためらいがちに口を開いた。
「何でかな。最後、俺に語りかけてきた気がするんだ」
「語りかけてきた?」
リボーンは首を傾げた。
Xバーナーを受けた白蘭が喋れるわけがない。最期は全身が跡形も無く消滅したのだから。
「何かさ、目が合ったんだ」
「目?」
「うん。何か言ってるみたいだった」
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