異世界の守り人

□いばらの城
4ページ/4ページ




 青年を助けるために飛び出したものの、アリィシアは少し後悔していた。
 青年を助けたこと――ではない。
 自分の状態を確認せず、魔物の腕を斬り落としたことだ。
(腕が、しびれる……)
 普段なら簡単に受け流せるはずの攻撃に、剣を持つ手が少なからずダメージを受けていることに、アリィシアは愕然とする。
 もしかしてとは思うが、肉体が弱体化しているのか……?
「……ふん」
 アリィシアは薄く笑う。ほとんど強がりの笑みだ。
 どうやらあの旅の扉には、何かしかけでもあったらしい。本当に弱体化しているのなら、今まで通り戦えば肉体に反動が来てしまうだろう。
 考えて戦わなければならないのか。
 考えて戦うなど――久し振りだ。
「っはぁ!」
 アリィシアは剣を持っていない腕を振り下ろした。
 特技まで使えなくなっていたらと思ったが、どうやらそれは杞憂だったらしい。
 振り下ろした手から、かまいたちが放たれた。
 放たれたかまいたちは魔物の胴体に当たり、身体をぐらりとよろめかす。だが寸断までは至らなかったようで、ぎろり、とこちらを睨み付けてきた。
 特技は使えるが威力は弱い。やはり、アリィシアの身体は弱体化している。
(どういうことだ? 一体私の身体に、何が起こっている?)
 アリィシアは自身の身体を見下ろすが、敵は考える暇など与えてくれなかった。
 ちろちろと、魔物の口からこぼれる火に、アリィシアははっとする。
「ファイアフォース!」
 アリィシアは慌ててファイアフォースで炎対策を施す。
 その後、だんっと地面を蹴る。自身にピオリムをかけ、更にアイスフォースを剣にかけた。
 そして。
「ドラゴン斬り!」
 飛び上がり、脳天から剣を振り下ろす。魔物は悲鳴を上げて倒れ込んだ。
 ずしん、と魔物の死骸が倒れる震動が辺りに響く。それを感じながら、アリィシアは腰の鞘に剣を戻した。
 たった一匹倒すだけでこの疲労。やはり、肉体が弱体化しているのは確実だった。
 一体自分の身体に何があったというのか。あの旅の扉にどういうしかけがあったのか。
 考える暇も無く――
「あ、あの……って、ちょっ!」
 アリィシアは青年の方へ倒れ込んだ。



続く…
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ