異世界の守り人
□いばらの城
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青年を助けるために飛び出したものの、アリィシアは少し後悔していた。
青年を助けたこと――ではない。
自分の状態を確認せず、魔物の腕を斬り落としたことだ。
(腕が、しびれる……)
普段なら簡単に受け流せるはずの攻撃に、剣を持つ手が少なからずダメージを受けていることに、アリィシアは愕然とする。
もしかしてとは思うが、肉体が弱体化しているのか……?
「……ふん」
アリィシアは薄く笑う。ほとんど強がりの笑みだ。
どうやらあの旅の扉には、何かしかけでもあったらしい。本当に弱体化しているのなら、今まで通り戦えば肉体に反動が来てしまうだろう。
考えて戦わなければならないのか。
考えて戦うなど――久し振りだ。
「っはぁ!」
アリィシアは剣を持っていない腕を振り下ろした。
特技まで使えなくなっていたらと思ったが、どうやらそれは杞憂だったらしい。
振り下ろした手から、かまいたちが放たれた。
放たれたかまいたちは魔物の胴体に当たり、身体をぐらりとよろめかす。だが寸断までは至らなかったようで、ぎろり、とこちらを睨み付けてきた。
特技は使えるが威力は弱い。やはり、アリィシアの身体は弱体化している。
(どういうことだ? 一体私の身体に、何が起こっている?)
アリィシアは自身の身体を見下ろすが、敵は考える暇など与えてくれなかった。
ちろちろと、魔物の口からこぼれる火に、アリィシアははっとする。
「ファイアフォース!」
アリィシアは慌ててファイアフォースで炎対策を施す。
その後、だんっと地面を蹴る。自身にピオリムをかけ、更にアイスフォースを剣にかけた。
そして。
「ドラゴン斬り!」
飛び上がり、脳天から剣を振り下ろす。魔物は悲鳴を上げて倒れ込んだ。
ずしん、と魔物の死骸が倒れる震動が辺りに響く。それを感じながら、アリィシアは腰の鞘に剣を戻した。
たった一匹倒すだけでこの疲労。やはり、肉体が弱体化しているのは確実だった。
一体自分の身体に何があったというのか。あの旅の扉にどういうしかけがあったのか。
考える暇も無く――
「あ、あの……って、ちょっ!」
アリィシアは青年の方へ倒れ込んだ。
続く…